2005-01-01から1ヶ月間の記事一覧

物騒なタイトルの…

別冊歴史読本05『殺人百科データファイル』(新人物往来社) おもしろいのですが、「犯罪度チャート」はべつに要らないのではないかとおもいます。河出書房新社の『図説 現代殺人事件史』に似てはいますが、明治から平成に至るまでの事件を幅広く取上げてい…

河村黎吉の名演技にうなる

『恋愛教室』(1950,松竹大船) 監督:池田忠雄、脚本:斎藤良輔、撮影:厚田雄春、音楽:万城目正 主題曲は、奈良光枝「恋の夜みち」と高倉敏・安藤まり子の「恋愛教室」。いずれも、作曲は万城目正、作詞は西條八十が担当しています。 後の『やっさもっさ…

豪華な執筆陣

『文藝春秋』二月号(文藝春秋) これは、「買い」です。とあるブログで、横田増生さんの『ネット書店アマゾン潜入記』が読めるということを知ったので、読んでみたわけです。 おそるべし、アマゾン。本そのものや、それに附随する「帯」や「カバー」に愛着…

「本」の愉しみかた

喜国雅彦『本棚探偵の冒険』(双葉文庫) 2005.1.20第一刷。この前、ネット上で喜国氏の本棚が公開されていたので拝見しました。壮観でした。 いっぽう我が家の本棚はというと、中身の統一感が全くとれていません。たとえば文庫棚には、二段(あるいは三段)…

遅れてきた名画

『七人の侍』(1954,東宝) 監督:黒澤明、監督助手:堀川弘通、廣澤榮ほか、脚本:黒澤明、橋本忍、小国英雄、撮影:中井朝一 ずいぶん以前に観て、観たことすら忘れかけていましたから、これが一回目の鑑賞ということになります。一昨年は、NHKの『武蔵』…

良質のスパイ映画を観た

『陸軍中野学校』(1966,大映) 監督:増村保造、撮影:小林節雄 『陸軍中野学校 雲一号指令』(1966,大映) 監督:森一生、撮影:今井ひろし、音楽:斎藤一郎 『陸軍中野学校 竜三号指令』(1967,大映) 監督:田中徳三、撮影:牧浦地志 良質のスパイ映…

第百三十二回芥川賞が、阿部和重さんの『グランド・フィナーレ』に決まりました。さっそく、本が出るみたいです。また直木賞は、角田光代さんが受賞しました。しかし、今回はどうも、去年ほどは話題になっていないような気がします。

アンチ・ヒーロー、地獄小僧

日野日出志『地獄小僧』(ちくま文庫) 2005.1.10第一刷。底本は、『地獄の絵草子 地獄小僧の巻』(ひばり書房,1987)。もともとは、「少年キング 増刊」に連載されていたものです。 その荒唐無稽な展開に、ついつい引込まれてしまいます。なにしろ、日野さ…

きのう、高見順賞(第三十五回)が、相沢啓三「マンゴー幻想」(書肆山田)と、建畠晢「零度の犬」(同)の二作品に決まったのだそうです。今年は、高見順没後四十年に当る年です。そのためなのか、『今ひとたびの』が河出文庫で登場しました。 偶然にも、最…

「敗戦後」の映画

『やっさもっさ』(1953,松竹) 監督は、澁谷實。原作は、獅子文六。音楽は、黛敏郎。 敗戦後の問題が、ギュッと凝縮された映画です。敗戦によるトラウマ、パンパンガールと混血児、「戦後民主主義」、そして朝鮮戦争…。 夫婦間の問題もテーマになっている…

世界を赤く塗れ

宮沢章夫『サーチエンジン・システムクラッシュ』(『文學界』1999.10) 宮沢氏の小説デビュー作で、芥川賞候補にも上りました。宮沢氏の、不条理脱力エッセイの数々は、新潮文庫、ちくま文庫、朝日文庫などに入っていて、文庫で出たものは大体読んでいるの…

成人の日。 今年からNHKは、「青春メッセージ」(もとは「青年の主張」)をやめて、まったく別の番組を放送するようになったようです。最近はたしかに、奇をてらったものが多く、あまりパッとしなくなっていました。

狂四郎最大のライバル

『眠狂四郎 無頼剣』(1966,大映) 監督は、三隈研次。脚色は、伊藤大輔。撮影は、牧浦地志。 シリーズ第八作。狂四郎(市川雷蔵)のライバルとして、愛染(天知茂)が登場します。 シリーズ屈指の傑作といわれるだけのことはあって、特にラストの円月殺法…

夜、訃報をきく。「小森のおばちゃま」こと小森和子さんが、八日に亡くなったそうです。享年九十五。

明日という日があるために…

『眠狂四郎 多情剣』(1966,大映) 監督は、井上昭。原作は、柴田錬三郎。撮影は、竹村康和。音楽担当は、伊福部昭。 シリーズ第七作。「明日という日があるために今日を生きるのではない」と言切る狂四郎(市川雷蔵)の、いつもながらのアンチ・ヒーローぶ…

寅さんが元気だったころ

『男はつらいよ』(1969,松竹大船) 監督は、山田洋次。脚本は、山田洋次と森崎東。「寅さんシリーズ」は、全部で四十作品くらい観ているのですが、恥ずかしながら、第一作を観たのはこれが初めてです。 こんなに躍動感のある寅さんは、はじめて観ました。…

カタブツの社長

『続・社長洋行記』(1962,東宝) 監督は、杉江敏男。正篇については、元日の条で書きました。 正篇には登場しない、三船敏郎が特別出演しています(尤敏の婚約者として登場)。私は正篇よりも、この続篇のほうをおもしろく観ました。フランキー堺(坂田)…

佐野流風姿花伝

佐野史郎『怪奇俳優の演技手帖(ノート)』(岩波アクティブ新書) 2004.12.3第一刷。俳優やタレントが、近年やたらと出すような「タレント本」とは一線を劃しています。内容はまったく異なるのですが、池部良さんや高峰秀子さんのエッセイなどと比肩しうる…

『薔薇曝れ首』

赤江瀑『花曝れ首(はなされこうべ)』 『花曝れ首』(講談社文庫,1981.8.15)所収。 単行本の書名は、『熱帯雨林の客』で、文庫化されてから改題されました。 解説は、山尾悠子。山尾氏は、赤江氏の短篇ベスト2として、この『花曝れ首』を挙げています。…

本田はわしだよ

『社長洋行記』(1962,東宝) 監督は、杉江敏男。製作は、藤本眞澄。 「社長シリーズ」の第十三作です。シリーズ初の海外ロケ。印象的なのは、社長の森繁久彌(本田英之助)と秘書の小林桂樹(南明)が飲んでいる長回しのシーンです。このときは、なおも飲…

垂涎の交遊録

堀切直人『本との出会い、人との遭遇』(右文書院) 2004.10.25発行。「週刊読書人」に連載された「本のハンター・ギャザラー」と、それとほぼ同量の書下ろしを収めた本です。文体は、つねに上品なたたずまいを失うことはありませんが、不意に他人への厳しい…