2007-01-01から1年間の記事一覧

岩本素白の随筆

来嶋靖生編『岩本素白随筆集―東海道品川宿』(ウェッジ文庫)。店頭平積みになっている状態で、表紙をはじめて目にしたとき、中公文庫BIBLIOに見えた。 岩本素白の随筆集が文庫でよめるとは、なんと贅沢な時代であろうか。 (げす)、(ごす)、(がす)など…

ことし観た映画

◆まだ早い気もするが、明日からしばらく更新できそうにないので、とりあえずまとめておく(*印は複数回観たことがある作品)。 マイケル・クリストファー『ポワゾン』(2001、米)、*ジョン・ヒューストン『マルタの鷹』(1941、米)、岩間鶴夫『美貌と罪…

最近、暇々に眺めていた映像

Sinitta の “Toy Boy”。懐かしい。高校時代、体育祭の入場行進の予行演習で、よくこの曲がかかっていた。仏教系のおカタい高校なのに、この歌詞は許されるのか? 黒沢清がよく、幼少時に観て怖かった、と語っている作品のOP(高垣眸原作なのか)。 BARBEE BO…

光悦本『謡曲百番』

光悦本『謡曲百番』といえば、梶山季之『せどり男爵数奇譚』(ちくま文庫)第一話「色模様一気通貫(いろもよういっきつうかん)」をおもいだす。 嵯峨本と云うのは、角倉素庵、本阿弥光悦らが、関東に対抗してつくったもので、いわゆる道楽出版の一つに数え…

「阿佐ヶ谷会」のことなど

◆沖縄風書体、そしてインド風書体、である。 そうすると、左はアイヌ風(たとえばアイヌ民族博物館のロゴ?参照)、右は大正ロマン風(こちらを参照)、ということになるのだろうか。役割語(金水敏先生)ならぬ、役割文字(書体)の存在を感じさせる。 ◆「…

『点と線』

わたしも通いなれた「JR大阪駅」(エキストラ総勢450人)で撮影が敢行された、ということもあって、(別の作業もしいしい)かなり期待して見た。第一部に比べ、第二部はやや失速した感がある。 わたしは、かならずしも「原作至上主義者」ではないが、不満だ…

しのごの

◆『日本国語大辞典 第二版』(小学館)、「士農工商」項の語釈(2)に、「他人とおりあわず、あれこれ不平をいうこと」とあり、下中彌三郎『大増補改訂 や、此は便利だ』(1936)における用例が引かれている(「妥協性を欠いて、いろいろ文句をいふことを、…

鉄道唱歌など

◆午前中に所用を済ませた後、天満天神繁昌亭行き。天牛で日本随筆大成を一巻(480円)、『大阪のうた』(大阪都市協会)400円、富田常雄『長篇小説 白虎』(大阪新聞社)100円。矢野書房で、小杉未醒(放庵)『新訳 絵本西遊記』(中公文庫)400円。西洋茶館…

ブルックナーの第五番

◆作業はかどらず、夜、ハンス・クナッパーツブッシュ&ウィーン・フィル『ブルックナー 交響曲第五番変ロ長調(改訂版)』(LONDON)聴く。“原始霧”にわけいって、「まるで求道者めいた渋い主題」(鈴木淳史氏の表現)を幾つも幾つも乗り越えながら、終楽章…

芥川龍之助

君看雙眼色 不語似無憂 たしか『黄雀風』だったと思う。芥川竜之介の小説集の扉に書かれた文字である。訓読は、 君看ヨ、雙眼ノ色 語ラザルハ*1、憂イ無キコトヲ似(しめ)ス と読む。ずいぶん長い間、「似」という字がよめず、「シメス」と知ったのは、安田…

芋づる式読書

◆Aさんが紹介してくださった某研究会に参加、M先生とお会いすることができた。帰途、Aさんと古書肆に寄り、杉浦明平『新・古典文学論』(創樹社)500円、一色次郎『青幻記・海の聖童女』(角川文庫)100円、源氏鶏太『家庭の事情』(角川文庫)100円、阿…

ふたたび『酒字集古』

◆永嶺重敏『東大生はどんな本を読んできたか――本郷・駒場の読書生活130年』(平凡社新書)よむ。新書という制限のため、「詳細に言及できない部分が多かった」(p.274)のはやむを得ないことであろうが、それでも得るところの多い本だった。 たとえば、東京…

憑物おとし

◆ウラジーミル・ナボコフ 若島正訳『ロリータ』(新潮文庫)を、やっとよみはじめる。今になって読み始めたのは、若島正『ロリータ、ロリータ、ロリータ』(作品社)が刊行されたことの影響にもよるのだけれど(ナボコフがグレアム・グリーンに献本したサイ…

隠れて読む本

◆『大阪春秋』秋号の「角山榮博士が語る 立川文庫あれこれ」に、 私が旧制の大阪高校に在学していたとき、あの有名な桑原武夫先生がフランス語の授業中、脱線して立川文庫の面白さ、楽しさをいろいろ話すことがあったんです。(p.56) とあって、大正初期か…

三木左助?

◆『大阪春秋』秋号(新風書房,特集:「近代大阪の出版事情」)の本文中ではくわしく触れられることがないが、北久宝寺町の「三木左助」(p.19)は、屋号としても「三木佐助」が普通ではないのか。 小田光雄『書店の近代――本が輝いていた時代』(平凡社新書)…

幾度目かの坊っちやん

◆夏目漱石『直筆で読む「坊っちやん」』(集英社新書ヴィジュアル版)、『ななじゅうまる 関西版』(フィード)を本屋で購った。『坊っちやん』直筆原稿の複製版は、かつて番町書房が出していたけれど、古書で買っても(というか、古書で買うとなおさら)値…

世の中には秘密が多すぎる

◆テレビ欄を眺めていると、「マル秘」が、やたら目につくときがある。今日もそうだった。大阪版の『朝日新聞』で実際に数えてみると……「毎日テレビ」(TBS系)に3つ、「ABCテレビ」(テレビ朝日系)に1つ、「関西テレビ」(フジテレビ系)に2つ、「読売テレ…

漢字漫歩

◆東京行きのオマケ+x。左から……「勝海舟生誕之地」碑(昭和四十三年建立)の「誕」字、都内某所で見かけた看板――「以」字および「駐」字(旁が「ナベブタ+土」)に注目――、千葉県某駅で見かけた看板――「駅」字の馬偏に注目――、成瀬巳喜男『浦島太郎の後裔…

「民」はどこから

◆いささか旧聞に属する事柄ではあろうが、『日本経済新聞』(2007.9.8付)に、「ケータイは辞書代わり――20代の8割 漢字変換で」という記事が載った。「国語に関する世論調査」についての記事である。 記事によると、20代の若者がある漢字を知ろうとするとき…

四天王寺→天神さん

今日は古本市日和。四天王寺と天神さん。 先にどちらを巡ろうか、と迷ったが、まだ行ってない四天王寺から巡ることにした。 ほぼ開場と同時に入る。古本ソムリエ氏の言葉を信じ、激戦区たる百均は後まわしにして、各書店の均一棚をまず見て廻る。書店名は失…

天神さん

昨日は、午後からちょうど用事もあったので、午前中「天神さん」に寄って来た。 そう長くいられなかったし、また日曜にも行く積もりなので(Kの店番が知り合いの人だから)、「百均コーナー」を軽く流して十冊、それから一冊だけ。百均コーナーは、すでにあ…

東京日記抄(その2)

※その1のつづき。 9.20(木)神保町一日目 土地鑑がないため、開店前にブックダイバーへ辿り着いてしまい、周辺をうろうろする。 神田書房で、日本ペンクラブ編 都筑道夫選『名探偵が八人』(集英社文庫)、栃折久美子『装丁ノート 製本工房から』(集英社…

東京日記抄(その1)

9.15(土)いざ東京へ 朝出る。車中、江藤淳の文庫本。午後十二時半(ママ)ころ東京着。9.16(日)銀座行き 銀ブラ。あるいは銀座ゴー。 自宅より持参の池田彌三郎『銀座十二章』(朝日文庫)がお供本。伊東屋でちょっとした買物。午後帰る。 妹宅から歩い…

大酒健三郎

◆坪内祐三『四百字十一枚』(みすず書房)のタイトルは、村上元三『四百字三十年』(番町書房)の捩りかとおもったが、どうもそうではないようだ。「大江健三郎」が誤植で「大酒健三郎」となっているのが(p.153)、可笑しいけれども(初めは態となのかとお…

涙ぐましいドラマ

◆ツイン21の古本フェア、今回は初日(土曜日)に行って来た。中公文庫をたくさん買った。川瀬一馬『随筆 柚の木』200円、島尾敏雄・吉田満『特攻体験と戦後』300円、池田彌三郎『まれびとの座 折口信夫と私』200円、大曲駒村『東京灰燼記 関東大震火災』300…

向日庵私版のこと

現在の枕頭「本の本」は、寿岳文章著 布川角左衛門編『書物とともに』(冨山房百科文庫)。寝る前に気のむいたところから読み始め、きりのよいところで適当にやめてしまうということを繰り返しているから、再三読んだエセーもあるし、全く読んだことのないエ…

人情紙風船

◆昨日、山中貞雄『人情紙風船』(1937,P.C.L)を観た。二回めの鑑賞。山中の東宝入社後最初の作品であり、また最後の作品である。 プロットは、江戸巷談のいわゆる「髪結新三(しんざ)」のエピソードが主なので(新三に扮するは中村翫右衛門)、浪人・海野…

わたし、生きてます

◆気がつけば、久しぶりの更新です。とはいえ、以下の殆どは少し前に書いたものです。某さんや某さんが、「higonosuke君、生きてるか?」と心配されていたようですが、大丈夫です。このとおり生きてます。 ◆八月初旬のこと。K古書肆の主人から、O書店が店を閉…

『冷血』を読む

◆風は強いが、ムシャクシャすることがあって外出。 古書のまちで、藤原相之助『東亞古俗考』(春陽選書)500円、太田全齋 藤井乙男解説『諺苑』(養徳社)300円、松本清張『遊古疑考』(新潮社)300円*1、大野晋ほか『日本語を考える』(讀賣新聞社)210円、…

オツベルと象

こちらを拝読しておもい出したのが、宮澤賢治「オツベルと象」。問題となるのは、この題名の「読み方」である。『新編 銀河鉄道の夜』(新潮文庫)所収の「注解」(天沢退二郎による)には、次のようにある。 自筆原稿は存在せず、初出誌(『月曜』―引用者)…