2010-07-01から1ヶ月間の記事一覧

蝸牛忌

今日は蝸牛忌*1なので(奇しくも、谷崎潤一郎の忌日がおなじ)、寺田透編『露伴随筆集(上)(下)』(岩波文庫,1993)が「お供本」だった。この本は、高島俊男先生が『本と中国と日本人と』(ちくま文庫)で「それはそれはひどいもの」と(編纂方針を)手…

東京での購書

実はいま、ある用事のため東京にいる。本日午後に帰阪する予定なので、またしても、みちくさ市に立寄れず残念無念(外市にも行けなかった)。八月上旬にも東京に出る予定があるのだけれど、主だった古書市とは日程が重ならないので*1、それも残念。 だが時間…

H.G.ウェルズの本

今月、光文社古典新訳文庫に、H.G.ウェルズの短篇集『盗まれた細菌/初めての飛行機』(南條竹則訳)が入った。 ウェルズというと、『タイムマシン』や『モロー博士の島』でよく知られている。また『宇宙戦争』は、オーソン・ウェルズによるラジオドラマの放…

岩波文庫でよむ柳多留

“岩波文庫 夏の一括重版”が本屋に出ていた。今回のラインアップには、山澤英雄校訂『誹諧武玉川』(全四冊)も入っている。品切になる前に買いそろえておきたいものだ。 さて、『武玉川』(慶紀逸選句)の編纂方針――つまり、前句を省いても句意のとりやすい…

『雨の日はソファで散歩』の文庫入り

かつて朝日新聞の文化面に、「○○は終わらない」という記事が連載されていた。タイトルは、プリーモ・レーヴィの『アウシュヴィッツは終わらない』に由来するのか、都井邦彦の『遊びの時間は終らない』*1に由来するのか、はたまた別の何かに由来するのか知ら…

日夏耿之介『唐山感情集』

柏木如亭 揖斐高校注『訳注聯珠詩格』(岩波文庫,2008)に記された校注者の余説は、『三体詩』が収録した詩については森川許六『和訓三体詩』を、『唐詩選』が収録した詩については服部南郭『唐詩選国字解』を引いているので、それだけでも読んで面白い。こ…

怪談牡丹燈籠

福岡隆『活字にならなかった話―速記五十年』(筑摩書房,1980)には「江戸言葉との格闘」という章があって、落語速記の労苦について書かれている。その話題は、八代目桂文楽個人全集(立風書房刊)の製作秘話が中心となっており、たとえばポーズフィラーの「…

春雨物語

以前、「漆山本春雨物語のこと」という駄文をものしたことがある。その後、小林勇の初めての随筆集『遠いあし音』(文藝春秋新社,1955)に収められた「漆山又四郎」(「編集者の囘想録」)を読んだ。ここには、『蝸牛庵訪問記』(講談社文芸文庫)では描か…

中野重治のことば談義

「させていただく」という表現に不快感を表明した文章を探してみると、あるわあるわ、かなり見つかった。 意外なところでは、中野重治の言がある。 中野 例えばだれかが死にますね。そこへ香奠を送るでしょう。いろんな場合がありますが、どうもありがとう、…

「桐一葉」というと、これは季語としても有名で、加藤郁乎『江戸俳諧歳時記(下)』(平凡社ライブラリー)「桐一葉」の項に、 『淮南子』ほかに出る「一葉落ちて天下の秋を知る」の一葉は梧桐(あおぎり)の葉。『滑稽雑談』に、「御傘云、一葉ちるに桐、柳…