2025-01-01から1年間の記事一覧

『詳解漢和大字典』の絵葉書のこと―餘話として

前回の記事「中野重治『本とつきあう法』をめぐることがら」で、吉川幸次郎『古典を生きる―吉川幸次郎対話集』(角川ソフィア文庫2025←『中国文学雑談 吉川幸次郎対談集』朝日選書1977)から、中野重治(1902-79)の発言中の一節「あるとき漢和辞典の話が出…

中野重治『本とつきあう法』をめぐることがら

池谷伊佐夫『書物の達人』(東京書籍2000)は、森銑三『書物と人物』からヘレーン・ハンフ編著/江藤淳訳『チャリング・クロス街84番地』に到るまで、戦中期~前世紀末の日本で刊行された「本の本」を網羅した「究極の書物図鑑」(帯より)である。 この池谷…

高山樗牛『瀧口入道』のこと

大学の学部3年生だった頃、さる方に好きな小説はなにかと訊ねられたので、いくつか作品を挙げてゆくなかに、当時入れ込んでいた高山樗牛(1871-1903)の『瀧口入道』の名を出したということがあった。いま考えると、若気の至りのようにも感じられて、いささ…

『西行花伝』餘話

前回の記事への補足。 辻邦生が『西行花伝』(新潮文庫2011改版←新潮文庫1999←新潮社1995,以下『花伝』)を書き上げるまでには、幾つもの壁に阻まれて、思うさま筆を進めることができなかったようだ。「なかでも大きな問題として立ちはだかっていたのが、当…

辻邦生『西行花伝』

今年は年始から“大作づいている”とでもいおうか、意識的に長篇小説に取り組んでいる。 たとえば1月末から2月末にかけては、ドストエフスキー/原卓也訳『カラマーゾフの兄弟』(新潮文庫、三巻本)を8年ぶりで読んでいた(27日間かけて読了した)。その間、…

ナサニエル・ホーソーンの短篇のことなど

荻原魚雷『古書古書話(コショコショばなし)』(本の雑誌社2019)に触発されて探し求めた本はたくさんあるが、マルコ・ペイジ(Marco Page)の『古書殺人事件』もその一冊である。 今回はマルコ・ペイジ著『古書殺人事件』(中桐雅夫訳、ハヤカワ・ミステリ…

ポー「アッシャー家の崩壊」

今年に入ってから、アマプラでエドガー・アラン・ポー「アッシャー家の崩壊」(“The Fall of the House of Usher”,1839)を原作とする映画を二本観た。まずはアイヴァン・バーネット『アッシャー家の崩壊』(1948年制作→1950年公開、英、“The Fall of the Ho…

北村薫「大岡昇平の真相告白」のこと

一昨年の2月、「「ドルジェル伯」と大岡昇平『武蔵野夫人』」というエントリを書いた。当該エントリでは、『武蔵野夫人』とレーモン・ラディゲ『ドルジェル伯の舞踏会』との関係を強調しすぎたが、そもそも大岡は、作中のフランス文学者・秋山と同程度の、あ…