赤堀又次郎の話

 反町茂雄『一古書肆の思い出』(平凡社ライブラリー)は、大学に入学したばかりのころ、書籍部で平凡社ライブラリーフェアがやっていたので、その時店頭に出ていた『一古書肆の思い出(1)〜(3)』を二千数百円で入手した。四巻と五巻は、その後かなり経ってからまとめて購った。
一古書肆の思い出〈3〉古典籍の奔流横溢 (平凡社ライブラリー)
 第二巻と第三巻に赤堀又次郎が登場するが、赤堀が所有していた稀覯本の話は第三巻「古典籍の奔流横溢」の方に出て来る。赤堀の没後、老婦人(赤堀夫人)が風呂敷包みを持って弘文荘にやって来る。聞けば、それは赤堀が非常に大事にしていた書物だという。桐製の箱に入った本で、その箱には「古寫本雜字類書」と書いてある。初めはその価値が分らなかった反町は、「中位の評価」の二千五百円でこの書を買う。ところが、橋本進吉『古本節用集の研究』の記述によって、この書物の驚くべき真価を知る…という内容である(pp.101-109)。こちらも参照のこと。