大酒健三郎

坪内祐三『四百字十一枚』(みすず書房)のタイトルは、村上元三『四百字三十年』(番町書房)の捩りかとおもったが、どうもそうではないようだ。「大江健三郎」が誤植で「大酒健三郎」となっているのが(p.153)、可笑しいけれども(初めは態となのかとおもった)、いかにももったいない(べつにオオエのファンではないが)。このての誤植が気になって仕方ない。
佐藤正午『ありのすさび』(光文社文庫)に「まず国語辞典」「続・国語辞典」というエッセイが入っていてオッ、とおもったが、愛用の辞典名(「何冊も常備してある」――文脈からして多分、別な辞書――のだという。いや、それだからこそ知りたいのです)が書いていないのにはがっかり。引用元の明示も無い。「ありのすさび」の語義をしるした箇所にはちゃんと、『広辞苑』と書いてあるのに。まあ全体的に面白いから別にいいのだけど。
◆『江戸川乱歩と13の宝石 第二集』(光文社文庫)所収の対談、松本清張×江戸川乱歩「これからの探偵小説」がおもしろい。乱歩は清張の出現を「画期的」だと誉めそやしつつも、清張の『零(連載時はこの表記―引用者)の焦点』休載をやんわりと窘めているし、また清張にいたっては、手きびしい「宝石」攻撃ときた。この、チリチリと火花を散らせている感じが、何ともたまらない。
新保博久氏が「解題」で書いているように、もう少し突っ込んだ議論を、というのはファンとして当然の望みだけれども、埋め合わせ企画としては十分な内容をもっている。
ところで今秋放送とかいう二夜連続のテレビドラマ「点と線」、放送は何時なのだろう。
◆明日からしばらく旅にでます。とはいえ、旅先でずっと遊んでるワケではないのですが…。