アクの強い読書論だし、この「読書絶対主義」(しかも
選民思想ぽい)には反撥も多かろうし、また、「受験勉強や資格をとるために本を読むのならともかく、仕事に役立てるためとか、教養を身につけるためとかいうような浅ましい考えで本を読むかぎり、仕事もできるようにならないし教養も身につかないだろう」「読書は仕事に役立てるためにするもの、と決めこんでしまえば、自分が現在やっている仕事に関連する本しか読めなくなってしまう」(p.71)などと書くそばから、「
司馬遼太郎の『
竜馬がゆく』のような本を読んでも意味はない」(p.147)とか「明治・大正の文豪の作品などは、文学を研究する人には役立つかもしれないが、それ以外の人の人生には役に立たない」(p.161)とか云っていて、なんだか矛盾しているような気がしないでもないのだが、『
水滸伝』が「私の生き方や考え方を変えた本」として紹介されていたのは嬉しかった(p.136)。ここでは、松枝茂夫編訳が主として紹介され、それ以外に
駒田信二訳(個人全訳)が挙げられている。
わたしが初めてふれた『
水滸伝』はもちろん抄訳版で、
青い鳥文庫版だった。最近出た
ちくま文庫版の駒田訳は、全巻に
高島俊男氏の解説がついていて、たいへん贅沢。
訳文の選定ということで、参考になりそうなのが、
の、「この夏休みには『
水滸伝』を読もう」(pp.266-69)。
佐藤一郎訳、
吉川幸次郎・清水茂訳、村上知行訳、松枝訳、駒田訳などが出て来る。もっとも、
高島俊男『
水滸伝と日本人』(これも
ちくま文庫に入った)を拠り所にしているのだけれども。
この本に入っている、「対の思想―あるいは影の部分について」「
水滸伝解題」「
水滸伝に見える『踅』の訳語について」も、
水滸伝を読むうえでは大いに参考となる。