行く年来る年

■ことし観た映画(*は複数回鑑賞したことのある作品)
山崎貴ALWAYS 三丁目の夕日』(2005)、*ルイス・ブニュエル『アンダルシアの犬』(1928仏)、杉江敏男『サラリーマン忠臣蔵』(1960)、杉江敏男『続サラリーマン忠臣蔵』(1961)、*小津安二郎麦秋』(1951)、長谷部安春*1『縄張(シマ)はもらった』(1968)、*杉江敏男『大学の若大将』(1961)、中村登『紀ノ川』(1966)、*成瀬巳喜男『稲妻』(1952)、増村保造華岡青洲の妻』(1967)、*山田洋次男はつらいよ 寅次郎恋やつれ』(1974)、山田洋次『霧の旗』(1965)、*バスター・キートン『探偵学入門』(1924米)、*ジョセフ・フォン・スタンバーグ『モロッコ』(1930米)、河毛俊作星になった少年 Shining Boy & Little Randy』(2005)、*三隅研次眠狂四郎 勝負』(1964)、*杉江敏男『社長洋行記』(1962)、*杉江敏男『続社長洋行記』(1962)、オリヴァー・ヒルシュビーゲルヒトラー 〜最期の12日間〜』(2004独墺伊)、野口博志『昼下りの暴力』(1959)、酒井辰雄『呪いの笛』(1958)、*篠田正浩『少年時代』(1990)、山本嘉次郎ホープさん サラリーマン虎の巻』(1951)、*藤田敏八『八月はエロスの匂い』(1972)、*二川文太郎『江戸怪賊傳 影法師』(1925)、市川崑『満員電車』(1957)、周防正行それでもボクはやってない』(2007)、キーファー・サザーランド『気まぐれな狂気』(1997米)、*安田公義『眠狂四郎 魔性剣』(1965)、谷口千吉『銀嶺の果て』(1947)、*三池崇史妖怪大戦争』(2005)、中村登『いろはにほへと』(1960)、江川達也東京大学物語』(2006)、市川崑細雪』(1983)、*井上梅次『死の十字路』(1956)、馬場康夫バブルへGO!! タイムマシンはドラム式』(2007)、河瀬直美殯の森』(2007日仏)、*宮崎駿ルパン三世 カリオストロの城』(1979)、小谷承靖『すっかり…その気で!』(1981)、*ルパート・ジュリアン『オペラの怪人』(1925)、*市川崑黒い十人の女』(1961)、*相米慎二ションベン・ライダー』(1983)、山本薩夫『牡丹燈籠』(1968)、成瀬巳喜男『あらくれ』(1957)、*成瀬巳喜男鰯雲』(1958)、*宮崎駿となりのトトロ』(1988)、森谷司郎『首』(1968)、『モンテ・クリスト伯』(1975米)*2、大工原正樹『もう・ぎりぎり』(1992)、篠原哲雄『クリアネス』(2007)、中村登『君美しく』(1955)、成島東一郎『青幻記―遠い日の母は美しく』(1973)、五所平之助『女と味噌汁』(1968)、毛利正樹『有頂天時代』(1951)、瀬々敬久HYSTERIC』(2001)、安田公義『座頭市喧嘩旅』(1963)、田中徳三座頭市兇状旅』(1963)、池広一夫座頭市千両首』(1964)、*アルフレッド・ヒッチコック『ダイヤルMを廻せ!』(1958米)、森一生座頭市逆手斬り』(1965)、*ブライアン・デ・パルマミッション:インポッシブル』(1996米)、水田伸生舞妓Haaaan!!!』(2007)、*三隅研次『斬る』(1962)、*リドリー・スコットブラック・レイン』(1989米)
ことしはあまり観られなかったが、再見した作品や比較的近年のものが多かった。付き合いでいやいや観たのもある。あまりにひどすぎて途中で観るのをやめてしまったの(某元アイドルのイメージヴィデオみたいな作品とか…)もあるが、それは上には書いていない。
バブルへGO!! タイムマシンはドラム式 スタンダード・エディション [DVD]
バブルへGO!!』はおもっていたほど悪くはなかった。むしろディテールに目がいった。こういう「ありえなさ」こそ映画にふさわしい。しかし、〈1990年〉というついこのあいだの出来事を描くことがいかにむつかしいか、ということがよく分った*3
『あらくれ』は、成瀬作品恒例の「物売りの声」の宝庫で、金魚売り、号外売り、甘酒売り、オイチニの薬売りなど、色々出てくる。殊にオイチニの薬売りの登場シーンは二度あって、その長閑な売り声と、高峰秀子が三浦光子を打擲する凄絶なシークェンスとの対比は見事というほかない。つかみ合いの喧嘩の後、雨がざあっと降り出す。これぞ成瀬映画。好きだ。
ナチスと映画―ヒトラーとナチスはどう描かれてきたか (中公新書)
ヒトラー 〜最期の12日間〜』のブルーノ・ガンツは巧い役者だな、と感心していたら、最近出た飯田道子『ナチスと映画』(中公新書)も「これまでにない、人間としての弱さと、残忍な独裁者としての狂気の間を揺れ動くヒトラーを演じきった。同じ状況でのヒトラーを描いた『アドルフ・ヒトラー/最後の10日間』におけるアレック・ギネスの演技と比較すると、違いは明らかだろう」(p.215)と賞讃していた。なおこの本は、「序章」だけでも十分に読む価値がある。ちなみに、『invitation』2009年2月号の栗原裕一郎「今月読む新書ガイド」では、「大変な労作」「ナチス映画のフィルモグラフィーとしても逸品」(p.105)と高く評価されている。

*1:最近は『相棒』の監督としても知られるようになった。

*2:テレビドラマ(全39話)の短縮版。エドモン・ダンテスはリチャード・チェンバレンメルセデスはケイト・ネリガン。フェルナンド、ダングラール、ファリア神父はそれぞれトニー・カーチス、ドナルド・プレセンス、トレヴァー・ハワード。ダンテスが神父に薬を飲ませるシーン、入れ子方式で話が展開するところ(岩波文庫版だと第二巻〜三巻あたり)、インド王妃の知遇をえるシーンなどがカットされているが、オリジナルでは原作どおりなのだろうか。

*3:幻想を描いて済ませられないだけ、つまり手が抜けない分、それはたとえば『三丁目の夕日』が昭和三十三年を「再現」することよりもよほどむつかしいのかもしれない。車種や電話の機種など細かい設定の矛盾点も指摘されているとか。