九月某日
アルバイト先に向かう途次、Jで唯円『歎異抄』(光文社古典新訳文庫)を買う。川村湊氏による「関西弁(京都方言?)訳」。また、内田樹『こんな日本でよかったね』(文春文庫)も買う。白川静先生の追悼文が入っているため。素早い文庫化。単行本は文藝春秋ではないけれど、まだ約一年しか経っていない。
十月には、清張の『幕末の動乱』が文庫入り(河出文庫)するとかで、これも約一年での文庫化ではなかったかと、ちょっと調べてみると、もう二年も経っていたのだった。しかし、それにしても早い。
九月某日
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八月某日
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このやるせなさ。そして、「夏はなぜ行ってしまうのか」という、(大林氏自身もそのタイトルで新聞に寄稿したことのある)あの永遠のテーマを描いた作品は、これがはじめてではなかったか。今考えてみると、小林聡美の義兄役が故・峰岸徹だというのが、妙にナマナマしい。
どこに居ても聞こえて来る水の音。ゆっくりと滅んで行く街。しかしその頽廃とは裏腹に、美しすぎる作品だと素直に感じた。主人公の山下規介(初々しい)が傍観に徹しているのもいい。
この映画を観て、来し方について色々おもうところあり、ふと寂しい心持になった。
八月某日
Mで、渡辺茂『漢字と図形』(NHKブックス)500円。献呈署名入。
東京へいらっしゃるHさんに最後の挨拶。寂しくなる。E氏の出るTV番組を教えてもらったり(今月はNHKに出ておられる―後記)、字体の資料を頂いたり、中国現代文学のお話をうかがったりした。京都で飲み明かした(?)のはいい思い出である。
八月某日
招待券を頂いたので、天王寺まで独りで『福澤諭吉展』を見に行く。その後、梅田に寄る用があったので、Kで、小絲源太郎『猿と話をする男』(筑摩書房)、三井高陽『切手談義』(通信文化振興會)、河盛好蔵『文藝用語辭典』(アテネ文庫)、前野直彬注解『唐詩選(上・中・下)』(岩波文庫)、假名垣魯文『安愚樂鍋』(岩波文庫)、松本清張『随筆 黒い手帖』(講談社文庫)、吉田金彦『ことばのカルテ』(三省堂新書)など全部100円。
『黒い手帖』は、多分三冊目。背色の違う中公文庫版を二冊持っているはず。そんなに持ってどうするの、とよく言われるが、ダブり本は、誰かに差上げるために買うのである。それがおもしろく読んだ本であれば、なおさらのこと。
八月某日
朝、中川信夫の遺作『怪異談 生きてゐる小平次』(1982,ATG)観る。登場人物が三人しかいないので、ロケーションがあっても閉塞的。小平次(藤間文彦―藤間紫の息子!)は本当に死んだのか、という肝心なことさえ次第に曖昧になってゆく不思議。原作は鈴木泉三郎。溯ること二十数年前の同タイトル作品(そちらは「生きている小平次」だったか)よりも、こちらのほうがいい。
八月某日
Nにて、『書法正解』第二巻1000円かう。加藤正洋『敗戦と赤線』(光文社新書)よむ。
八月某日
コンラート・ローレンツ 小原秀雄訳『人イヌにあう』(ハヤカワ文庫NF)かう。こないだ文庫化された『トンデモ本の世界Q』で、唐沢俊一氏だったかが言及していた。
同じシリーズのカール・セーガン『悪霊にさいなまれる世界』は、以前うっかり買いそうになったが、これは新潮文庫版『人はなぜエセ科学に騙されるのか』を改題して復刊したものなのであった(単行本タイトルは『悪霊に憑かれた世界』)。新潮文庫版の「訳者あとがき」(青木薫)で触れられる、訳者の苦労がすごい。「本書を訳すために、私は神学の森に迷い込み、“宇宙人の死体”で有名なロズウェル事件の藪に分け入り、エドワード・ギボンの『ローマ帝国衰亡史』をめくり、『易経』をひもといた。バスケットボールの話を訳すために、なんと、日本のバスケットボール人口を飛躍的に増やしたというコミック『スラム・ダンク(原文ママ)』全三十一巻を読破してしまった」(下巻,pp.405-06)。
八月某日
Oにて、佐藤垢石『隨筆 たぬき汁』(墨水書房)、升田幸三『勝負の虫』(朝日新聞社)各210円。なかなかいい買い物。佐藤の『たぬき汁』は、その後の続篇からもセレクトされた新編という形でなら、熊本のAで購ったことがある。私は、釣りはほとんどした事がないが、森下雨村だの井伏鱒二だのといった、いわゆる釣魚随筆はけっこう好んで読む。
八月某日
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『澁澤龍彦 日本芸術論集成』(河出文庫)を見る。「暁斎」に、「ぎょうさい」とルビが振ってある。