今日は松本清張の誕生日。TBS系でドラマ「火と汐」がやっていた。清張記念館でも企画が目白押しだが、行けない。

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翻訳家列伝101 (ハンドブック・シリーズ)

翻訳家列伝101 (ハンドブック・シリーズ)

 おもしろく読んでいる。懇切なルビ。色々あるが、たとえば、『新青年』編集長としての「横溝正史(まさし)」、実作者としての「横溝正史(せいし)」など(pp.198-99)。また、「安藝郡」(p.20上段)「藝術院会員」(p.30下段)などとするあたり、小谷野先生らしい。
 こちらに正誤表あり。ほかに気づいた点を記しておくと、これも見れば分ることだが、中野好夫阿部知二の目次ページ数が誤っている(p.2下段)とか、「箕作阮甫」のルビが「みつくりげんぱ」となっている*1(p.263上段)とか。それから、p.151に柳瀬尚紀を評して「ひと世代上の英文学者である高橋、小田島雄志の衣鉢を継ぐようなところもある」と書いているが、「高橋」というのは、高橋康也のこと?
 余談。私の母は三十年ほど前に仕事の関係で、北御門二郎(pp.90-91)の研究室に出入りしていたらしいが、掲載されている顔写真を見て、若いころの面影がほとんどない、と驚いていた。最晩年の写真なのだろうか。

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 この本に触発されて、続けさまに、未読のままだった翻訳書を読んでいる。
 中野好夫訳『ガリヴァ旅行記』(p.112)、田中西二郎訳『情事の終り』*2(p.124)など。加島祥造訳『アシェンデン』(p.143)は知らなかったが(私は中島賢二・岡田久雄訳で読んだ)、龍口(たつのくち)直太郎訳の『秘密諜報部員』というのを何故か持っている。これは数篇しか読んでないが、『ティファニー〜』と同じくらいひどい訳なのか、改めて読んでみようかとか。野崎孝訳『ブラック・ボーイ』(p.135)は改版が出たばかりなので、書店で見てみる積り。
 また『西遊記』(pp.192-93「中野美代子*3」の項、p.287に登場)は、松枝茂夫(pp.188-89)*4訳(青い鳥文庫版)、小野忍・中野美代子訳(中野先生が新たに訳した第一〜三巻は未読)を読んだが*5、オリジナルの平岩弓枝版は読んだことがなかった。これを、ちょうど巧い具合に400円で入手したばかりなので、時間のあるときに読もうとおもっている。
 そうそう。話題となっている、

未踏の時代 (日本SFを築いた男の回想録) (ハヤカワ文庫JA)

未踏の時代 (日本SFを築いた男の回想録) (ハヤカワ文庫JA)

 これも読んでいます。福島正実は、『翻訳家列伝101』のpp.215-16に登場。

*1:「みつくりげんぽ」が正しいが、そもそも「甫」字を「ホ」と読むのは、模韻字「補」「圃」等に引かれた日本独自の類推音である(虞韻(三等字)だから、本来は「フ」と読むべきであった)。

*2:文庫版でも、タイトルがもともと『愛の終り』となっていたことは知らなかった。

*3:そういえば、『「西遊記」XYZ』(講談社選書メチエ)が今月刊行された。

*4:松枝茂夫の主たる訳業として、『學生字典』の邦訳『支那文を讀む爲の漢字典』(文求堂)もあることを附け加えておく。現在は研文出版から刊行(http://www.seiwatei.net/chinakan/chinakan.cgiでも公開されている)。ひと昔前までは説文の検索用にも使われたが、語釈が簡にして要を得ている。百目鬼恭三郎が賞讃していた記憶がある。編訳者は、田中慶太郎(文求堂店主)となっているが、これは金田一京助監修『明解國語辭典』がほぼ見坊豪紀の独力になるというのに似て、松枝茂夫が殆ど全てを手がけたと聞いた。序文に名前は挙げてあるのだが。

*5:ちなみに、太田辰夫・鳥居久靖訳は『西遊真詮』(清代)の全訳、小野・中野訳は『李卓吾先生批評西遊記』(明代)の全訳。