柳沢有紀夫『日本語でどづぞ』(中経の文庫)第二弾、『世界ニホン誤博覧会』が、こんどは新潮文庫から出ていた。前著よりも、分類基準がわかりやすくなって来た。
 p.215、薬局の看板字を「わぁ〜す〜い!」と解しているが*1、この「で」は「ご」なのではなかろうか。写真が不鮮明で、ちょっとわかりにくいのだが、祖父江慎さんの『フォントブック―和文基本書体編』(毎日コミュニケーションズ)などを見てみると、ダイナコムウェアの極太ゴシック体の「ご」によく似ている。フォントに詳しい方にお訊きしてみたいものだ。

世界ニホン誤博覧会 (新潮文庫)

世界ニホン誤博覧会 (新潮文庫)

日本語でどづぞ―世界で見つけた爆笑「ニホン」誤集 (中経の文庫)

日本語でどづぞ―世界で見つけた爆笑「ニホン」誤集 (中経の文庫)

フォントブック[和文基本書体編] (+DESIGNING)

フォントブック[和文基本書体編] (+DESIGNING)

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 今週号の「週刊新潮」で読んだのだが、TBSで「檸檬」(梶井基次郎)、「黄金風景」(太宰治)、「魔術」(芥川龍之介)、「高瀬舟」(森鷗外)など短篇小説6作品がドラマ化されるのだそうだ(二月十五日に放送開始との由)。全然知らなんだ。「檸檬」(佐藤隆太主演)の丸善には「神田の古本屋を使った」のだとか。監督は吉田恵輔や熊切和嘉が務めたとあり、楽しみなのだが、関西でも放送してくれるのかな。
特設サイトがあった。)
 いつもたのしみにしているTEMPOの書評欄には、縄田一男さんによる『天才 勝新太郎』評が。その冒頭、「私はこの一巻を読みながら、幾度も落涙が止まらず、ページを繰る手を止めねばならなかった」。
 縄田氏編・解説になる子母沢寛他『時代小説英雄列伝 座頭市』(中公文庫)の解説は、勝の芝居に関しては西脇英夫*2評を引くなど、客観的叙述をこころがけていたが、この書評は「おもい入れたっぷり」に書いている。

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 「庚寅」といえば、やはり何といっても屈原である。「攝提(=寅歳)孟陬に貞(あた)りて(もしくは貞=ただ=しくして)、惟れ庚寅に吾以て降れり」。「離騒」第一節の三・四句。
 「離騒」は全部で九十三節もある(二千八百余言)。松枝茂夫編『中国名詩選(上)』(岩波文庫)所収のものは、十節のみの節録だが、橋本循訳注になる『楚辞』(岩波文庫、品切重版未定)には全て収められていたはず。最終節「亂」前の第九十二節、「陟陞皇之赫戲兮」はふつう「皇の赫戲たるに陟陞し」と読下すが、「陞皇(おほぞら)の赫戲たるに陟(のぼ)り」と読むのがあって、奇異に感じたことがあるが(藤堂明保先生の本だったような…)、続く「忽臨睨夫舊郷(忽ちかの舊郷を臨睨す)」に揃えたものでもあろうか。
 白川静先生は生前、「若い頃には『離騒』をすべて諳んじていました」と仰っていた。また、詩題を「りぞう」と読まれていたと記憶している。

中国名詩選〈上〉 (岩波文庫)

中国名詩選〈上〉 (岩波文庫)

*1:日石の「ワーキレー」をおもい出してしまったではないか。中谷美紀がCMに出ていた(あれからはや十五年)。

*2:名著『日本のアクション映画』の著者。