松竹設立三十年記念映画・池田浩郎『思い出のアルバム』(1950松竹)に、数十篇の松竹作品が名場面とともに紹介されていることは、以前このエントリで書いた。そこに登場する国産初のトーキー映画、五所平之助『マダムと女房』(1931松竹)には、渡辺篤に向けての田中絹代のセリフ――「それに近頃のエロでしょ。エロ100パーセントでしょ!」――が出てきて、この「エロ100パーセント」が、新村出編『言苑〔戦後第三版〕』(博友社1951)に「エロひゃくパーセント」と立項されていることもさきに述べたとおり(語釈は「色氣たっぷり」)。八年前に観たとき(それも二回目だった)は、気づかなかったセリフのひとつ。
その後、BS2の再放送でこの台詞を直接確認する機会はあったのだが、当該語のそれ以外の用例が、なかなか見つからないのである。
見坊豪紀『ことばのくずかご』(ちくまブックス1979)pp.135-36で紹介されているのも、やはり『マダムと女房』の劇中のセリフ。また、見坊氏の『辞書をつくる―現代の日本語』(玉川大学出版部1976)は、同じことをやや詳しく述べている(p.151)。
楳垣実編『隠語辞典』(東京堂出版1956)には、「エロひゃく〔ero 百〕 色気たっぷり。極めて煽情的なこと。〔←エロ百パーセント〕(俗)[現]」(p.67)とあるけれども、用例はなし。『日国』第二版は立項せず。
米川編著などには見えるのだろうか。
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