『松本清張索引辞典』補遺

 昨年末、森信勝編『松本清張索引辞典』(日本図書刊行会)という労作が出た。清張ファンの私などにとってはよい手引きになるし、たいへんありがたいことである。
 2015.12.22付「毎日新聞」2016.1.6付「中日新聞」2016.2.29付「読売新聞」にも記事が出ている。この辞典のデータは2015年6月1日までのもので、その後も、清張作品や清張関連書は陸続と刊行・映像化されている。
 「補遺」などというのは口幅ったいことだが、同書に収録されていない刊行物のうち、気づいたものを以下に挙げておくこととしたい。
 まず、「松本清張著書・共著年次別刊行索引」の1996(平成8)年、
或る「小倉日記」伝/父系の指(新潮pico文庫) 1996.3.25 新潮社 
 1998(平成10)年、
私のものの見方 考え方―私の人生観(人物文庫) 1998.6 学陽書房
 2011(平成23)年、
紅刷り江戸噂 新装版(講談社文庫) 2011.1.14 講談社
高台の家(PHP文芸文庫) 2011.7.16 PHP研究所
 2013(平成25)年、
古書ミステリー倶楽部*1 ミステリー文学資料館編(光文社文庫) 2013.10.20 光文社
 次に、「松本清張参考文献年次別刊行索引」の1980(昭和55)年、
戦後世代の風景―1964年以後 松本健一 1980.1 第三文明社
 1999(平成11)年、
人生は五十一から 小林信彦 1999.6(2001年に文庫化) 文藝春秋
 2008(平成20)年、
古本屋群雄伝 (ちくま文庫青木正美 2008.12.10 筑摩書房
 2009(平成21)年、
文藝春秋SPECIAL夏号「映画が人生を教えてくれた」(みうらじゅん「清張映画見て、わがフリ直せ」
(※この年は、清張の生誕100年にあたるが、雑誌等の特集のうちの一部はここに記した。)
 2010(平成22)年、
作家の食と酒と 重金敦之 2010.12.1 左右社
 2013(平成25)年、
図書館に通う―当世「公立無料貸本屋事情」*2 宮田昇 2013.5.17 みすず書房
 2014(平成26)年、
ある文人学者の肖像―評伝・富士川英郎*3 富士川義之 2014.3.5 新書館(2016.3.13追加)---
 他に気づいた点。p.374、「195 昭和史 松本清張と私(ビジネス社)」の著者名(渡部昇一)ヌケ。したがって「収録人名索引」に渡部氏の名がない。

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 2015.6以降に刊行された作品で、「松本清張著書・共著年次別刊行索引」に新たに追加すべきもの。
白と黒の革命(P+D BOOKS) 2015.7.24 小学館
分離の時間 松本清張プレミアム・ミステリー(光文社文庫) 2015.8.6 光文社
彩霧 松本清張プレミアム・ミステリー(光文社文庫) 2015.9.9 光文社
詩城の旅びと(P+D BOOKS) 2015.10.6 小学館
梅雨と西洋風呂 松本清張プレミアム・ミステリー(光文社文庫) 2015.10.8 光文社
混声の森(上・下) 松本清張プレミアム・ミステリー(光文社文庫) 2015.11.11 光文社
大奥婦女記 レジェンド歴史時代小説(講談社文庫) 2015.11.13 講談社
喪失の儀礼 改版(新潮文庫) 2016.3.5 新潮社
風の息(上)(P+D BOOKS) 2016.3.8 小学館
 「松本清張参考文献年次別刊行索引」に新たに追加すべきもの。
芥川賞の謎を解く―全選評完全読破*4 (文春新書)鵜飼哲夫 2015.6.20 文藝春秋
この作家この10冊*5 本の雑誌編集部編 2015.8.20 本の雑誌社
本と読書の斜解学―本に関するコラムあれこれ*6 植沢淳一郎 2015.9.15 ブレーン
ケトル VOL.27 特集:松本清張が大好き! 2015.10.27 太田出版
 他に追加すべきものもあると思う。とりあえず、いま手持ちの資料でわかるものを挙げておいた。思い出したり調べがついたりしたら、適宜更新してゆく予定である。

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 ところで「序にかえて」(森信勝)に、「没後23年を経た本年4月より「新・松本清張ミステリー時代劇」全12話の第1話「流人騒ぎ」が開始される」(p.2)とある。
 番組タイトルの「新」は不要かと思うが、このシリーズは、「BSジャパン開局15周年」を記念して昨年の4月7日から放送された番組である。本放送に先立ち、3月31日に「松本清張ミステリー時代劇を100%楽しむための公式ガイドブック」(司会:住吉美紀、出演:新井康弘、眞鍋かをり、金子貴俊、八田亜矢子ほか、解説:大石学)が放送された。
 そして、「流人騒ぎ」(4/7)、「七種粥」(4/14)、「役者絵」(5/5)、「左の腕」(5/12)、「大黒屋」(6/2)、「山椒魚」(6/9)、「逃亡」(7/7)、「大山詣で」(7/14)、「虎」(8/4)、「雨と川の音」(8/11)、「赤猫」(9/8)、「町の島帰り」(9/15)の順で12話が放送された。その後、10月から1カ月に2話ずつ(第3,4火曜日)のペースで再放送されており、今月でその再放送も完結することになる。
 BS放送といえば、昨年12月5日にはBS日テレが「オリジナルドラマ」と銘打って、「わるいやつら」(主演:船越英一郎)を放送した。年が明けて1月21日には、BSプレミアムで「松本清張ゼロの焦点』を読む」(出演:小森陽一、橋本麻里、中村文則笠井潔、華恵)が放送*7された。これに触発されて、『ゼロの焦点』を久しぶりでじっくり読み返したものである。
 また今月12、13日(二夜連続)には、地上波のテレビ朝日で「地方紙を買う女」(主演:田村正和)、「黒い樹海」(主演:北川景子)が放送されるので、楽しみにしている。
 テレビ朝日は、清張歿後20年の2012年にも、二夜連続で清張原作の「十万分の一の偶然」「熱い空気」を放送しており、前者でも田村正和が主演を務めている。また、一昨年の12月にも、やはり二夜連続で「坂道の家」(主演:尾野真千子)、「霧の旗」(主演:堀北真希)を放送している。こちらもなかなか見ごたえがあった。

松本清張索引辞典

松本清張索引辞典

*1:「二冊の同じ本」収録。

*2:pp.186-98「『点と線』と書評の役割」。

*3:pp.211-16「松本清張の京水探索」等。

*4:pp.89-91。

*5:pp.342-49「松本清張の10冊」(香山二三郎)。

*6:pp.41-45「松本清張『或る「小倉日記」伝』(新潮文庫)」、pp.138-44「苦労人の文学の時代…昭和の時代と松本清張が物語るもの…」。

*7:「シリーズ・Jミステリーはここから始まった」第一回。第二回は横溝正史の『八つ墓村』で、今のところこの二回しか放送されていないようである。