2024-01-01から1年間の記事一覧

佐藤春夫『田園の憂鬱』のことなど

先日、佐藤春夫の『田園の憂鬱』を久しぶりで再読した。『田園の憂鬱』は文庫版を二冊もっている。一冊は『田園の憂鬱』(新潮文庫1951*1)、もう一冊は『田園の憂鬱』(岩波文庫2022年*2)で、後者は佐藤の生誕130年(そして今年は歿後60年に当る)を記念し…

芝木好子『隅田川暮色』「洲崎パラダイス」のことなど

今年1月、「本よみうり堂」の連載「私を作った書物たち」に乙川優三郎氏が登場し、その第3回(1月21日付「読売新聞」)で芝木好子(1914-91)の『隅田川暮色』を紹介していた。 乙川氏自身によると、芝木のこの作品は「(乙川氏自身が)デビューして間もなく、…

イーディス・ウォートンや『配達されない三通の手紙』のこと

イーディス・ウォートンについては、昨年末まで、「『エイジ・オブ・イノセンス』で女性として初めてピューリッツァー賞を受けた作家」といった教科書的な知識しか持ち合わせていなかったのだが、小森収『はじめて話すけど…… 小森収インタビュー集』(創元推…

向田邦子「大根の月」のことなど

実家にVHSの録画機器が導入されたのはわたしが小学4年生の頃で、1991年のことだった。当時TVCMに出演していた鈴木保奈美の顔写真の販促用シールが貼ってあって(なぜかその色が褪せるまで家族の誰もがそれを剝がさずにいた)、たしか「マラソン美録」を謳い…

「魔」字の話

いまも新刊で買えるのかどうか分らないが、田中慶太郎編譯『支那文を讀む爲の漢字典』(研文出版1962,以下『漢字典』)という辞書がある。これはもともと1940年に田中慶太郎の文求堂から刊行されたもので、1962年の四版から版元が「(山本書店出版部)研文…