2011-01-01から1年間の記事一覧

忘れられる過去

今朝の読売新聞の「ポケットに1冊」が、荒川洋治さんの『忘れられる過去』(朝日文庫)を紹介している。記事には、「本の年譜、注解から索引、検印から価格まで、その細部の面白さを、これでもか、というほど書く。本は読むだけのものではない。眺め、触り、…

「隠居学」

先月出た、加藤秀俊『隠居学―おもしろくてたまらないヒマつぶし』(講談社文庫)を時々読んでいる。加藤先生の著作は中公新書で二冊読んだことがあるくらいだから、『隠居学』が単行本で出ていた(2005年刊)のは知らなかった。 タイトルは『隠居学』だが、…

「福引」の本、二冊め

こないだ某店の店頭200均で、多木鎭雄著『新案 福引資料集成』、という本を購った。 購入した「福引」の本は、これでようやく二冊めである。一冊めは神鳥洞春亭編『新版 福引一千題』(東栄堂実用新書1960)で、同書については以前ここに書いたことがあり、…

「巳己巳巳(イコシキ)」四字説

以前ここに、「己巳已」三字対立について、そして三字の区別に関する口承記憶法について書きました。 その後、拙ブをご覧くださった方々から、口承記憶法の別なヴァージョンをご教示いただいたり、許慎『説文解字(せつもんかいじ)』(A.D.100頃成立、以下…

『革新幻想の戦後史』

最近の「ロコポロ本」は、竹内洋『革新幻想の戦後史』(中央公論新社)である。「ロコポロ本」というのは、たしか原田宗典がエッセイで書きとめていたと記憶するが、要は、「目からウロコ(呉智英などにいわせると、正確にはウロコのようなもの、ということ…

最近の購書状況(抜書)

八月某日 Aからの帰り、Kがまだ開いていたので、野島剛『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)を買う。福田和也さんが、「世間の値打ち」(「週刊新潮」7.28)で「読み応えある」本として紹介し、その読みどころを手際よくまとめていたので、にわかに読みたくな…

アンデルセン童話

しばしば挿絵に惹かれて本を買うことがある。江戸期の版本から挿絵を採った小川環樹・武部利男共訳『三國志 通俗演義』(岩波書店)しかり、原田維夫の挿絵の入った陳舜臣『小説 十八史略』(毎日新聞社ミューノベルズ*1)しかり。 ドレ画の『ドン・キホーテ…

『白楽天詩選』

川合康三訳注『白楽天詩選(上)』(岩波文庫)が出た。ついに真打登場、といったところか。唐宋代の「詩選シリーズ」(岩波文庫)は、一人一冊が基本になっているが(李白、杜甫、蘇軾、柳宗元、杜牧、陸游、李商隠、李賀など、おもいつくものはみんなそう…

露伴と正木旲

静嘉堂文庫美術館で、『日本における辞書の歩み―知の森への道をたどる―』という展覧会が開催されている(今月末まで)。 「週刊新潮」7月7日号にもそれなりに大きな記事で紹介されていて(p.123)、いますぐにでも見に行きたいところなのだが、あいにく時間…

足立巻一『やちまた』

先日、本居春庭『詞通路』三冊を入手したので、灯下なぐさみに繰っている。美濃判、薄鼠色の表紙で、巻頭に「蘇維南」の朱印が、巻末にはそれぞれ「平林蔵書」の朱印が押されているが、旧蔵者についてそれ以上のことはわからない。所々に朱で書入れがある。 …

狩野亨吉の生涯

このあいだ、久しぶりで京都へ行った。その途次Y書店の平台で、シャルル・バイイの岩波文庫とE.H.ノーマンの『忘れられた思想家―安藤昌益のこと(上・下)』(岩波新書)とを見つけたので買ってきた。ノーマンの『クリオの顔』は岩波文庫版で面白く読んだの…

この一年に観た映画

5〜6月は『おとうと』一本をようやく観られたくらいですし、これから7月に入るまでに、多分一本も観られないでしょうから、このあたりで、昨夏以降に観た映画の感想(?)を公開します。 気に入った度合を(つまりまったくの主観によります)、星の数であら…

昔の角川文庫

どの文庫でもそうだが、ある著者の文庫化作品をすべて集めたつもりでも、旧版と改版との間でちょっと困ったことが起きてしまう。 たとえば以前、拙ブログでも、堀辰雄の角川文庫作品について書いたが、通し番号「442」(著者別番号75-1)のついた文庫には、…

購書日記から

昨日のエントリにアップする積りでしたが、長くなったので分割します。表記などに不統一が見られますが、そのまま掲載します。 - 三月某日 昼すぎから用があるので出たついでにM書房へ。高知新聞編集局取材班『黒い陽炎―県闇融資究明の記録』(リーダーズノ…

『基本古語辞典』のことから

先月新装版として復刊*1された小西甚一『基本古語辞典』(大修館書店)は、1966年に初版が出ているが、1983年の三訂大型版*2に至って、これは私の「著作」である、という独自性が明確に打ち出されたようである。 この辞典は、わたくし自身が書いたものであり…

感銘を受けた「本の本」

前回の記事、といっても、もう一か月近く前のエントリになるが、寺田寅彦について書いた。 すると、ちょうどけさの「空想書店」(本よみうり堂)が、寅彦の随筆集を紹介していた(須藤靖氏)。せっかくなので、以前書いた記事にすこし手を加えたものを載せて…

天災は忘れたころに

阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)が起きたとき、わたしは中学一年生だった。地震直前の、地鳴りのような恐ろしい音で目が覚めた。直接的な被害は、幸いなことに殆どなかったが、震度6の地震を体験したのはもちろん初めてのことだったし、その後はしばらく…

『論語』ブーム(番外篇)

異常に世間を騒がせた(というか、マスコミが煽り立てた)例の問題について、つまるところはモラル向上が抑止力となるのだといった言説を聞いたりすると、その当否は別として、「子曰道之以政齊之以刑民免而無恥道之以徳齊之以禮有恥且格(子曰く、之を道く…

唐詩選序跋故事/山川方夫

鈴木俊幸『江戸の本づくし―黄表紙で読む江戸の出版事情』(平凡社新書)をよんでいると、 かたや「唐詩選」は、「五言絶句と意見する」のである。「五言絶句と」は、何の地口というわけでもなさそうであるし、現代語訳は不可能であるが(p.222) という箇所…

原節子特集

新潮45 2011年 03月号 [雑誌]出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2011/02/18メディア: 雑誌 クリック: 36回この商品を含むブログ (6件) を見る 附録DVD「生命の冠」がお目当てというよりも、原節子が特集されているのだったら、それだけでも食指が動こうという…

落合氏の新著

甲骨文字小字典 (筑摩選書)作者: 落合淳思出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2011/02/16メディア: 単行本 クリック: 11回この商品を含むブログ (9件) を見る 落合淳思『甲骨文字小字典』(筑摩選書)が出ていた。『甲骨文字の読み方』(講談社現代新書)の附…

武玉川ほか

平澤一『書物航游』(中公文庫)*1は繰り返し読んでもいっこう飽きない本で、これを読んでいなければ、『暁烏敏先生講話集』を手に取って見ることはきっとなかったろうし、木下杢太郎(太田正雄)に関心を寄せることもなかったであろう。杢太郎については、…

阿部真之助の本

一月の用事をほぼ終えつつあるので、ひさしぶりで古本市にゆくと、欲しい本がたくさん出ていて困った。それでも、状態のよい長澤孝三編 長澤規矩也監修『漢文学者総覧』(汲古書院)を二千円で買えたし、カルピス文化叢書の一冊、矢野仁一『古中国と新中国』…

『例解国語辞典』をめぐることがら

マニアというほどのものではないが、国語辞典を読むのが好きである。あたらしい辞書が出ると、少々無理をしてでもついつい買ってしまう。最近では、「新(改定)常用漢字表」に対応した北原保雄編『明鏡国語辞典【第二版】』(大修館書店)を購った。初版に…

2011年

本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。 - 正月行事にも、土地の風習が色濃くのこっている。たとえば我が家でいただくお屠蘇であるが、味醂や清酒ではなくて、母の郷里から毎年送ってもらう「赤酒(あかざけ)」(独特の甘みが特徴)に屠蘇散を浸してつくる…