スターがズラリ

『爆笑王座征服』(1958,新東宝
監督:毛利正樹、製作:大蔵貢、撮影:河原喜久三、音楽:長瀬貞夫。
毛利さんは、喜劇や時代劇だけではなくて、新東宝版『四谷怪談』とか『怪談 鏡ヶ淵』とかいったいわゆる「怪談もの」をも手掛けた名監督です。
演出・製作は、大蔵貢。つまり、新東宝の社長自らが演出を担当したわけです(彼は、製作時の陣頭指揮にあたったといわれています)。さすがに社長まで出てきただけのことはあって、出演者の顔ぶれがやたらと豪華です。嵐寛寿郎高島忠夫天知茂、北沢典子、大空真弓由利徹宇津井健、三ツ矢歌子、高田稔、丹波哲郎三原葉子明智十三郎、久保菜穂子、池内淳子、江川宇禮雄、高倉みゆき……。もうこのあたりでやめておきますが、とにかく「すごい」ことになっているのです。
しかも本作品は、なんと約三十分の小品。それだけのみじかい時間のなかで、スターたちが「名鑑」よろしくドンドン登場して「演技」するのですから、当然ながら、眼がくぎづけになるわけです。また、演目(パロディです)にも注目。「白浪五人男」「不如帰」「仮名手本忠臣蔵」…。スターが各自の持ち味をいかして演じきります。題名のとおりの「爆笑」とまではいきませんが(この題名じたい、いかにも「新東宝」らしい。つまり売らん哉のタイトル。べつに、それがわるいことだとは言っておりません)、ときおり「クスッ」と笑ってしまうくらいのギャグが披露されます。劇場主の由利徹も、いい味を出しています。
ただし残念なのが、スターがたくさん出ているのにも拘らず、もったいないカメラワークであるということ。たとえば、私がわりと好きな「北沢典子」は、ほとんど顔が見えないまま下がってしまいます。まあそこまで要求するのは、「望蜀の嘆」というべきものでありましょう。贅沢な映像版「スター名鑑」をみられただけでも満足すべきなのでしょう。