同じ星のもとに…

眠狂四郎無頼控 魔性の肌』(1967,大映

眠狂四郎無頼控・魔性の肌 [DVD]
監督:池広一夫、原作:柴田錬三郎、脚色:高岩肇、撮影:竹村康和、音楽:渡辺岳夫、主な配役:市川雷蔵眠狂四郎)、鰐淵晴子(ちさ)、久保菜穂子(おえん)、長谷川待子(志乃)、渚まゆみ(岩風呂の女)、成田三樹夫(三枝右近)、金子信雄(朝比奈修理亮)、木村俊恵(園枝)、三木本賀代(お千代)、稲葉義男(巴屋)、遠藤辰雄(釜屋)、伊達三郎(神戸七郎太)、毛利郁子(お駒)。
シリーズ第九作。相変らず、台詞も立ち回りもとにかく格好良い狂四郎。狂四郎は黒ミサの儀式によって生れているので、親との縁をたちきっており、神を信じていない*1。いっぽう、狂四郎の今回の敵は「黒指党」*2で、ジアボという神をあがめています。首領の三枝右近*3を演ずるは、成田三樹夫。これがピッタリ役にはまっているのです。
ラストではついに、狂四郎と三枝右近とが対峙します。神はある、という右近と、いや神はない、という狂四郎。この問答シーンも見ものですし、狂四郎のことばが、そのまま現代の「いんちき宗教」批判になっている、というのも見ものです。
ところで、ちさ*4役の鰐淵晴子がたいへん美しい。『ノンちゃん雲に乗る』(1955)で、愛くるしい少女としてデビューした彼女ですが、七十年代のたとえば『悪魔が来りて笛を吹く』(1979)では、すでに妖艶なマダムとなっており、さらに九十年代の『眠れる美女』(1995)や『柘榴館』(1997)では、『傷だらけの天使』以降の岸田今日子のようなポジションさえ獲得しました*5。しかし、本作品のころの(つまり六十年代後半の)鰐淵晴子はほんとうに綺麗です*6。それもまた、見ものといえましょう。

*1:本作品で狂四郎は、「この世には、釈迦もゼス・キリストもない。いわんやジアボなどという神のあろうはずもない」と言いはなちます。その出生の秘密は、『女妖剣』であきらかにされます。

*2:島原の乱」の叛乱軍の「残党」という設定になっています。

*3:彼も、狂四郎とおなじ宿命をせおって生れてきた―ということが明らかになります。

*4:彼女がまた、狂四郎が同情を寄せるくらい、薄倖の身なのです。

*5:『オー・ド・ヴィ』(2003)では、またまた「新天地」を開拓しました。

*6:タッド・若松による『イッピー・ガール・イッピー』の存在は、『日録 20世紀』第1巻第4号(講談社)の「美女倶楽部」というコーナー(このコーナーはどういうわけか、しばらくしてから消えてしまいました)で知りましたが、その写真集の登場が当時は衝撃的であったというのも肯けます。