青春のセンチメンタリズム

青春の殺人者』(1976,今村プロ=綜映社=ATG)

青春の殺人者 デラックス版 [DVD]
監督:長谷川和彦、製作:今村昌平・大塚和、助監督:石山昭信、企画:多賀祥介、脚本:田村孟、原作:中上健次『蛇淫』*1、撮影:鈴木達夫、音楽:ゴダイゴ、主な配役:水谷豊(斉木順)、内田良平(父)、市原悦子(母)、原田美枝子常世田ケイ子)、白川和子(ケイ子の母)、江藤潤(宮田道夫)、桃井かおり(石川郁子)、地井武男(日高徹)、高山千草(漁師の女A)、三戸部スエ(漁師の女B)、阿藤海
これで、ゴジの監督作品は二本とも観た(→参照)ことになります。
どうしようもなく悲劇的な作品。しかし、エンドロール直前にゴダイゴの「憩のひととき」(アルバム『新創世記』より)が流れはじめたときには、ポール・オースターの『ムーン・パレス』を読み終えたときのような、ある種の感傷にひたっておりました。なるほど、やはりこれは「青春映画」なのだな、とおもった次第です。もう少し早く(ハイティーンのころに)観ておけば良かった。
主人公の犯す殺人にはまったく共感できませんが、その後何度か挿入される回想シーン(とくに砂浜のシークェンス)がなんだか切なくて、『太陽を盗んだ男』一本ではうかがい知ることのできないゴジの側面を垣間見るような気がします。また、かなり大仰な市原悦子の演技とか、ATG調の創作映像(劇中の8ミリ映像)の荒っぽさとかは、良くも悪くも長谷川和彦らしさが遺憾なく発揮されている部分なのではないかとおもいます。
ちなみに樋口尚文さんは、本作品を「アメリカン・ニューシネマ」ふうであると評し、むしろ長谷川和彦の持ち味が(殺人シーン以外で)存分に発揮された作品だ、と書いています(『「砂の器」と「日本沈没」 70年代日本の超大作映画』筑摩書房)。

*1:一九六九年に起った殺人事件をモデルにした作品なのだそうです。