日記から(2)

日がな一日、病臥。
目を覚ますと体の節々が痛い。体がばらばらになったような感覚。父母は墓参りに行った。私も墓参する積りだったのだが、体がいうことをきかない。体温は36.9度→37.9度→37.6度→38.0度と推移。なかなか熱が引かない。
従弟が貸してくれた、たなか亜希夫『Glaucos』(講談社モーニングKC)全四巻のうちの二巻までをようやく読む。漫画以外の活字は、なぜかまだ読めない。
夕刻、ミステリチャンネルで、『薔薇の殺意』(原作は中井英夫『虚無への供物』、ドラマは八年前のもの)が放送されていたので、寝床で「聞く」。首を動かすことさえだるく億劫なので、登場人物たちの顔を最初に確認した後は、画面を全く見ないことにする。ちょうど最終回の「白い旅路」がやっていた。ああこの声は仲村トオルだな、とか、この声は深津絵里だな、とかいちいち諒解しながら聞く(ところで藤木田老は誰が演じたのだろうか)。原作は読んだことがあるので、結末や展開は判っている。すこし脚色があった様だが、ともかくも「聞けた」だけでまあ満足である。もちろん、機会があれば全篇を通して見たいが。
この「薔薇の殺意」については、いまはなき『幻想文学』(たしか第49号)が、かつて巻頭特集を組んでおり、脚本をかいた奥寺佐渡子さん(あの相米慎二『お引越し』の脚本を担当した人!)のインタビューも掲載していた。奥寺さんは『虚無への供物』を二十歳の頃に初めて読んだ、と語っており、私も二十歳の夏にこれを読んで感銘をうけていたので、結末とか小道具(たとえば薔薇)をどのように使うかとかに、かなり関心があったのである。
…それにしても、せっかくの帰省が台無しである。今夏は滞在日数が少ないので、できればもう少し充実した一日を過ごしたかった。