日記から(1)

晴れ。
父と午後六時五分発の飛行機に乗る。盆がとうに過ぎているためか、空席が目立つ。
離陸後の窓外、眼下に広がる雲海が美しい。
ポケットに入れて機内に持ち込んだ、読み止しの『姿三四郎(二)』。矢野正五郎が、五高の校長に赴任するため熊本へ向かうシーンがあり、その偶然に驚く。また機内では、本を読みながら「クラシカル・エアー」を聴く。音質は悪いし多少の邪魔も入るが、EMIクラシックスの新譜が聴けるので嬉しい。ヴィヴァルディ「四季」、夏の第三楽章「プレスト」など。ソネンバーグ指揮、聖ルカ管。
鈴木史朗さんがパーソナリティをつとめる歌謡番組も聴く。テレサ・テン「空港」、中森明菜「北ウイング」など。
熊本に着くころには、雲と空との境界がぼやけてグラデーションのようになっている。雲を抜けると、なつかしい風景が見えてきた。午後七時過ぎ、熊本空港着。母と叔母に迎えに来てもらう。八時過ぎに、母の実家に到着。夕食は軽くすませてきたが、辛子明太子やクラゲの刺身を頂く。美味。
しばらくすると、腰のあたりが妙な感じになってきたので、これは熱を出す前兆かと思っていたらやはりそうで、やがて立っているだけでだるくなった。38.3度。平熱は35度台なので、私にとっては高熱である。薬を飲む。なかなか寝つかれず、村松梢風『女経』(中公文庫)を読むが、活字をなぞるだけで内容が全く入ってこない。目を瞑って我慢をしていたら、そのうち眠りに落ちたが、高熱で何度か目が覚める。