アメリカの鱒釣り

朝、腹痛を起し、研究発表会に遅れてしまう。
アメリカの鱒釣り (新潮文庫)
帰途Fに立寄り、書籍部では見当らなかったリチャード・ブローティガン 藤本和子訳『アメリカの鱒釣り』(新潮文庫)を購う。私は、ブローティガンを、友人M君の紹介によって知りました。M君は私に、シモーヌ・ヴェイユを教えてくれたし、黒沢清も教えてくれた。それはまあ、どうでもいいことですが。
ブローティガンの著作を読むのは(今まさに読もうとしているところ)、じつは初めてなのですが、岡崎武志さんの「トウキョウのブローティガン釣り」*1を読んでいなければ、読む気が起らなかったかも知れません。『西瓜糖の日々』(河出文庫)や『愛のゆくえ』(ハヤカワepi文庫)が復刊されたときでさえ、たとえばセリーヌの『夜の果てへの旅』改版*2(中公文庫)が出たときのような興奮はおぼえなかったので。しかし、「トウキョウのブローティガン釣り」を読みおえると、ブローティガン自身が、そして代表作『アメリカの鱒釣り』がにわかに気になり始めたのです。
ところでokatakeの日記にも、『アメリカの鱒釣り』文庫化の衝撃が語られています。「文庫化のインパクトが強すぎ」て、谷川書店で何も買えなかった、とまで書いてあります。
新潮文庫版『愛のゆくえ』のように、いつの間にか品切絶版になっていた、ということにもなりかねないので、出来るだけ早いうちに確保しておくべきでしょう。それにしてもこの文庫は、原著のペーパーバックや晶文社版とおなじ表紙カバー写真が使われているのが嬉しいし*3、何と言っても解説者が柴田元幸さん(「『アメリカの鱒釣り』革命」)というのが素晴らしい。「文庫版へのあとがき」(藤本和子)も面白そうだ。
ちなみに、「okatakeの日記」でふれられていた藤本和子訳『不運な女』(九月刊)は、帯でも紹介されています。できればこちらも読んでみたい。

*1:『古本極楽ガイド』(ちくま文庫)p.16-23。書下ろしだそうです。

*2:旧版の書名は『夜の果ての旅』。「へ」がない。生田耕作の「新訳」が反映されているのは、上巻の途中まで。

*3:装釘は平野甲賀