日記から

朝起きると、頭がひどく痛い。しかも、はげしい腹痛が夜までずっとつづく。神経性のものか、食あたりによるものか。大学は休む。TさんやN君からメールが届く。心配して下さって有難い。
レジュメ作成、読書。皮肉なことに、腹痛のせいで「お供本」がふえる(まともに読めはしないのだが)。向田邦子『森繁の重役読本』(文春文庫)、三國連太郎 沖浦和光『「芸能と差別」の深層』(ちくま文庫)、玄洋社社史編纂會『玄洋社社史』(玄洋社)、林芙美子『北岸部隊』(中公文庫)、山口昌男『「挫折」の昭和史(上)』(岩波現代文庫)、猪野健治『日本の右翼』(ちくま文庫)、夢野久作夢野久作全集11』(ちくま文庫)。
玄洋社社史』が、来島恒喜の行動*1を、「敢て玄洋社の預り知る所にあらず、又玄洋社の後援する所にあらず」(本文p.4)と切り捨てているのが興味ふかい。杉山茂丸の伝記は、頭山満の伝記に附されるかたちで掲載されている。『日本の右翼』や『夢野久作全集11』は、「玄洋社」「頭山満」「杉山茂丸」つながりで再読。久作全集のこの最終巻には、「近世快人伝*2」や「父杉山茂丸を語る」が収められていて、杉山が玄洋社を離れたあとも、頭山と懇意にしていたことなどが語られている。「近世快人伝」で、夢野久作は父を初めのほうで「杉山茂丸」と呼んでいるのだが、それが「其日庵主」→「法螺丸」と変わっていく過程が面白い。ちなみに坪内祐三氏は、杉山の著作について「講談社学術文庫に『百魔』が、中公文庫に『児玉大将伝』が収録。ただし両書共に品切れ」(『古本的』毎日新聞社,p.81)と書いていて、私はその両書とも未入手である*3
また、林芙美子『北岸部隊』の冒頭部から出てくる杉山平助が、『「挫折」の昭和史』にも登場する偶然にちょっと驚いた。山口昌男氏は、「昭和九年版の杉山(平助―引用者)の『人物論』(改造社、一九三四年)には写真展(「ライカによる文芸家肖像写真展」のこと―引用者)の被写体になった人々のうち、横光利一林芙美子北村小松長谷川如是閑についてのエッセイが載っており、中でも北村小松と如是閑と林芙美子には、へそまがりの杉山も好意を寄せている」(p.79)と書いている。北村小松といえば、昨日再鑑賞した『マダムと女房』(1931)の原作者(脚本も担当)でもある。

*1:大隈重信暗殺未遂事件。

*2:頭山満杉山茂丸、奈良原到、篠崎仁三郎。

*3:昨年出たばかりの杉山其日庵浄瑠璃素人講釈(上下)』(岩波文庫)は持っている。