美味なり、鮟鱇鍋

雨ふる。午後から大学。演習準備など。
新刊書店で、間羊太郎『ミステリ百科事典』(文春文庫)を購う。本編はもちろんだが、初収録の「別巻2 妖怪学入門」に惹かれた。著者の間氏は、SF作家「式貴士」として、また、ポルノ作家「蘭光生」としても活躍した*1蘭光生がもっとも有名かもしれない。私は読んだことがないのだが。
夜は、等輩のK君に誘われて、Kさんの家で鮟鱇鍋を頂くことになった。Tさん、K君、U君と行く。I君も来る。
「鮟肝」以外の鮟鱇料理はまともに食ったことがないはずだが、これが美味。話も弾む。私は、所用あって九時すぎに帰ったのだが、余波惜しい気持ちで一杯だった。
帰途、『ミステリ百科事典』を読む。ミステリ以外にも、興味ふかい話題が満載の本だ。たとえば、「クリスマス」の表記についての話。

Xmas と X'mas デパートの飾りつけや、商店の包装紙などによく見かけるクリスマスの略字には表記の二通りがある。これは’印の無い方が正しい。Xはギリシャ語のキリスト XPIΣTOΣ の頭文字であり、mas はミサを意味する。もともと Christmas は Christ's mass がつまって一語となったもの。「キリストの聖祭」という意味。では何故 Xmas が、X'mas と誤用されているのか。これは多分、短縮形だからというので気をきかして学のある人が’印をつけたのか、或は辞書を引くと X´mas とあるのでそのアクセント記号´印を’と感違い(ママ)して X'mas と書くようになったのかもしれない。最近ではさすがに、一流デパートではみんな Xmas となっている。(p.274)

「X'mas」表記は誤っている、というのは、金武伸弥『あってる!? 間違ってる!? 漢字の疑問 「ことば」は生きている』(講談社+α文庫,1996.品切)などでも指摘されたことだが(p.328-29)、「'」がアクセント記号に由来しているのかもしれない、という説は初めて聞いた。
ちなみに、金武氏は次のようなことも書いている。

Xmas が正しいにしても略式の書き方ですから、広告など字数やデザイン上の制約がある場合に使うもので、英語の普通の文章の中ではあまり使いません。Christmas と書くのが正式です。まして日本語の文章中に「Xマス」などと書くのは感心しません。(p.329)

この文章は後に、金武伸弥『新聞と現代日本語』(文春新書,2004)に再録された(p.213-15)。

*1:他にも幾つかのペン・ネームを持っているようだ。