とか何とか言っちゃって♪

西村元男『こんな別嬪見たことない』(1954,大映。以下、映画名は「別嬪」と略す)、西村元男『こんな美男子(ハンサム)見たことない』(1954,大映。以下、映画名は「美男子」と略す)を観た。何れも四十数分間の小品。また同年に、『こんなアベック見たことない』『こんな奥様見たことない』という作品も製作されたようだが(未見)、これらは西村の監督作品ではない。
「こんなベッピン見たことない」(関根利根雄作詞)・「こんな美男子見たことない」(石本美由起作詞)は、古賀政男作曲の流行歌で、「ゲイシャワルツ」で有名な神楽坂はん子が唄っている。
「別嬪」「美男子」は、いわゆる「歌謡映画」なので、もちろん神楽坂自身も出演して唄っている。役名は「神田坂かん子」。やはり藝者という設定である。
木村惠吾『娘の縁談』(1955,大映)でも再認識したことだが、「別嬪」にも「美男子」にも登場するヒロイン・南田洋子が可愛らしい。特に、「別嬪」の南田洋子(悠子)が良い(「美男子」は、後半で内容がやや湿っぽくなる)。また「別嬪」には、私の好きな霧立のぼる*1(萩原耐の『新柳櫻』は良かった)が出ていて、戦前の彼女と較べると、ずいぶん女優としての貫禄が備わっている。
女性陣の活躍(「美男子」には、飯田蝶子も出ている)で影が薄くなりがちだが、もちろん男性陣も忘れてはならない。「別嬪」「美男子」ともに、船越英二と潮万太郎が出て来る。この二人は、西村元男『恋の野球拳 こういう具合にしやしゃんせ』(1955,大映)という(これまた)歌謡映画で親子役を演じており、特に潮は、むしろ喜劇人としての素質をもっていたのではないかと思わせるほどである。「別嬪」でも「美男子」でも発せられる「しゃないなァ」という口癖は、まかり間違えば、「ギャグ」として受容された可能性も高い、などと考えてみたりした。
船越英二大映作品というのも、増村保造作品(『盲獣』などはその「極北」にある)とか新東宝に対抗した(?)「エログロ」路線とかのほうにどうしても目が行きがちだけれども、「別嬪」や「美男子」などの「二枚目半」役で、俳優としての本領が発揮されているような気もする。

*1:宝塚少女歌劇出身。ちなみに、歌手に「霧島昇」という人がいたが、この藝名は、「霧立のぼる」をもじったものである。