二代目『印刷雑誌』創刊九十年記念本

機を逸した感もあるが……
「近代印刷史歴覧」「『印刷雑誌』記事集成」の二部構成。その第二部から。
今井直一「活字書体と読み易さ(上)(下)」(S.18,pp.402-414)。これは、今井直一『書物と活字』(印刷学会出版部1949,1970普及版)第五章「和文活字の読みやすさ」の縮約版という趣だが、該書では触れられていないこともある。木村房次「移りゆく活字書体」(S.35,pp.548-556)。南海堂書体、長体かな……。このあたり、片塩二朗『活字に憑かれた男たち』朗文堂1999 を参照しつつ読んでいる。佐藤敬之輔「明朝体の歴史(一)(二)」(S.47,pp.603-620)。インタビュー構成(君塚樹石、安藤末松)の記事含む。野村保惠「本づくりの常識・非常識(五)」(H.12,pp.702-711)。約物連続時の組み方、追い込み、調整等への言及有り。
戦時下の寄稿者。錚々たる顔ぶれ。
花森安治「宣伝といへばポスター」(S.18,pp.414-417)
徳永直「『印刷文化』について」(S.19,pp.423-432)
恩地孝四郎「決戦下の装本」(S.19,pp.432-436)
河盛好蔵「紙と印刷」(S.19,pp.436-439)など。
当時の花森は、大政翼賛会に籍を置いていた。

八並([王+連]一―引用者)宣伝部長の下の副部長の一人は、花森安治だった。大学で私より一年下だったと思うが、大学新聞の記者をしていたので、私は何となく名前と顔を知っていた。(中略)私が平部員で、彼が副部長というのは、どういうことだろうと思ったりした。もっとも、彼は翼賛会創立以来の職員で、私は中途からの採用だからだろうとも思っていたが。
その花森は、まだ戦後「暮しの手帖」で有名になる前で、私が頭を下げると、あの手焼きセンベイのような、モンゴル系の先祖を思わせる顔を横に向けて、にやりと笑った。
杉森久英大政翼賛会前後』ちくま文庫2007,pp.262-63)