◆「そうてい」おぼえがき(情報の御提供求む)
- 田中敬「『さうてい』字義考」(『汲古隨想』早川図書,昭和八年→昭和五十四年覆製版)
「通雅に「以葉子装釘謂之書本」の語が見えて居るから少くとも明代には(「装釘」が―引用者)既に用ひられて居たことが知られる」(p.45)。
「『装釘』の不適當であるが如く、『装幀』も亦不備な點を有つて居ると言はねばならぬ」(p.53)。
「『装綴』の文字を bookbinding の譯語として用ひてはどうかと思ふ」(同前)。
見出し語「装訂」。「装釘と書くのは、明治の製本工の同音を誤った用字法」、「釘や幀を使うくらいなら、今日では、装丁と書く方がよろしい」(p.8)。
「小生思うに、書誌学会の『きちんとまとめる訂』はいかにも苦しい。『釘』は殺伐だというのはもっともな点があるが、さりとて『幀』などという他に用のない字をかつぎ出すにもおよぶまい」(p.208)。
「製本工房から」(装幀)→「装丁ノート」(装丁)?
- 倉島長正「『装丁』か『装幀』か」『正しい日本語101』PHP文庫,平成十年
- 池谷伊佐夫『神保町の蟲 新東京古書店グラフィティ』東京書籍,平成十六年
- 大貫伸樹『製本探索』印刷学会出版部,平成十七年
- 和田誠『装丁物語』白水uブックス,平成十八年←平成九年
「装丁と装幀」(pp.18-31)
◆山口大学の「『未来学力』の構想および新しい入学試験問題のあり方に関する学際的研究」という共同研究を端緒とした個別研究の成果が、最近相次いで書籍として纏められた。石川巧、入不二基義両氏による著作である。
まず、石川巧『「国語」入試の近現代史』(講談社選書メチエ)。
- 作者: 石川巧
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/01/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 1人 クリック: 20回
- この商品を含むブログ (12件) を見る
また、石川氏のように「大衆教育における修養主義、実用主義と高等教育における教養主義」(p.40)と二極化を認めるならば、たしかに説明がある程度スムースに行くかもしれないのだが、「国学の伝統を受け継いだ純然たる国文学」(p.77)に批判的なあまり、「日本対西欧」の旧態二元論からやや自由でない印象をうけた(特に第三章)。
国語教科書というものが、「読解力」の育成ではなく、むしろ「道徳」の涵養をめざすものとして機能していると述べていたのは、石原千秋『国語教科書の思想』(ちくま新書)であったが、もしそうだとすれば、国語教育における「鑑賞主義」や入試問題文に左右のイデオロギーが流れ込みやすいことにも首肯できる(石川氏の著作の第五章には戦時下における「日本精神発揚」の、第六章には戦後民主主義教育下における「ヒューマニズム礼賛」等の具体例が有る)。「読書とは心を豊かにするものである」という、うんざりするようなお説教も、ここに淵源があるという気がする。これは微温的な「『鑑賞』主義」と言い替えられるのかも。
「読む」ことは謎を知ることであり、謎を解くことでまた新たな謎が生成されるような反復こそが「読む」という行為を面白くさせるという認識(p.88)
このあたりは、文章の受け手側(出題者でもあり、解答者でもある)の問題ということになるのだろうが、入不二基義『哲学の誤読―入試現代文で哲学する!』(ちくま新書)は、まさにこの点からの解析をこころみたものである。
- 作者: 入不二基義
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2007/12/01
- メディア: 新書
- 購入: 8人 クリック: 95回
- この商品を含むブログ (37件) を見る
大学入試の戦後史―受験地獄から全入時代へ (中公新書ラクレ)
- 作者: 中井浩一
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2007/04
- メディア: 新書
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (11件) を見る