特撮映画と塚本映画

孫悟空』(1959,東宝

監督:山本嘉次郎、特撮技術監督:円谷英二、製作:田中友幸、宇佐美仁、脚本:村田武雄、山本嘉次郎、撮影:小泉一、音楽:團伊玖磨、主な配役:三木のり平孫悟空)、市川福太郎三蔵法師)、千葉信男(猪八戒)、中村是好沙悟浄)、団令子(ポン)、小杉義男(閻魔大王)、由利徹(金角大臣)、中田康子(銀角大臣)、南利明(銅角大臣)、天本英世(書記官長)、藤田進(王祥)、藤木悠(剣士チクジン)、八千草薫(翠蘭)、大川平八郎(その父)、一の宮あつ子(その母)、徳川夢声(紙芝居の親爺)。配役の豪華さにうなりました。千葉信男は、『月と接吻』(1957,東京映画)でも三木のり平と共演し、こちらでは三文文士・梅童を演じていました。中村是好は、『エノケン孫悟空』(1940,東宝)では金角を演じていました。
個人的には、大川平八郎、藤田進、そして徳川夢声の紙芝居がみられるのが嬉しい。戦闘シーンでは、間延びするところやくどいところもありましたが、そんなに悪くはありません。おもしろいのは、緊箍呪がないかわりに、「毛をむしり過ぎて苦しむ孫悟空」というよくわからない設定であること。ミュージカル的要素のある特撮映画で、特撮シーンはさほど多くありません。ラストが、ちょっぴり腰くだけ。『西遊記』の筋とはおおきくことなっているので、要注意。

六月の蛇』(2003,海獣シアター)

六月の蛇 初回限定版 [DVD]
監督・製作・脚本:塚本晋也、撮影:志田貴之、音楽:石川忠、主な出演者:黒沢あすか(辰巳りん子)、神足裕司(辰巳重彦)、塚本晋也(飴口道郎)、寺島進不破万作田口トモロヲ。まあ、なんというか、塚本氏らしい映画です。若干、「塚本テイスト」はうすれているような気もしますが、佳品だとおもいます。『東京フィスト』(1995)は、大都会のなかのふるい一軒家が舞台だったのですが、今回は郊外のモダンな一戸建てが舞台です。
本作の塚本(飴口)は、たんなるストーカーではなくて、黒沢(りん子)を救済する役まわりでもあります。
ブルートーンの終始じめじめした映像と、手撮り感のあるショットがよい。また、江戸川乱歩の『蜘蛛男』を無意識に模倣しているようなショットもあります。