そして日常はつづく

『グレゴールとおばあちゃん』(2001,独)“GREGORS GROΒTE ERFINDUNG”

監督:ヨハネス・キーファー、主な配役:アレクサンダー・ベイアー(グレゴール)、クリステル・ペターズ(ヘルタ)。オスカー短篇部門ノミネート作だそうです。短篇映画は、様々の要素をつめ込むよりも、この映画のようにぼんやりとした輪郭を持っているべきではないか。
登場人物たちの「日常」が透けて見えてくるような映画でもある。おばあさん達はいつも同じことしか言わないし、グレゴールはいつも同じことしか考えていない。
日常はいつまでも続く。そして、その日常はスクリーンにぴったりと張付いたまま、身動ぎひとつしない。一見ほのぼのとした作品ではありますが、映像をはなれて、いずれ死にゆくヘルタに思いをいたすとき、我々は素直に喜んではおれないことにようやく気づくわけです。
その点で、残酷な作品であることもまた確かです。