カルメン、カムバーック!

カルメン故郷に帰る』(1951,松竹大船)

監督・脚本:木下恵介、製作:月森仙之助、撮影:楠田浩之
記念すべき、日本初の総天然色長篇映画です。「草軽電鉄電気機関車」(デキ12系機関車)の走行シーンがカラーで見られる、ということで、鉄道ファンのあいだでも有名な映画なのだそうです。
全篇にわたって、シューベルトの音楽(「鱒」、「軍隊行進曲」、「ロザムンデ」序曲、「未完成」、「楽興の時」など)が流れる、愛すべき作品です。軽井沢の青い山々を背景に、リリィ・カルメンことおきん(高峰秀子*1)とマヤこと朱実(小林トシ子)が踊る長回しのシーンがたいへん印象的です。登場人物が「青山一家」であるというのも、バカバカしくて良いですね。
プロットとしてはよくありがちなのですが、〈カルメン〉という異物(ストリッパー)が〈村〉という日常にやって来たことで、村じゅうが大騒ぎ…というもの。つまりこれは、たんなる帰郷なのではなくて、「侵入」にちかい衝撃を村人たちに与えたのではないでしょうか。
ちなみに続篇の『カルメン純情す』(1952)は、残念ながら未見。こちらはモノクロームです。

*1:字幕では、「高峯秀子」となっています。