佐野流風姿花伝

佐野史郎『怪奇俳優の演技手帖(ノート)』(岩波アクティブ新書)

怪奇俳優の演技手帖 (岩波アクティブ新書)
2004.12.3第一刷。俳優やタレントが、近年やたらと出すような「タレント本」とは一線を劃しています。内容はまったく異なるのですが、池部良さんや高峰秀子さんのエッセイなどと比肩しうるおもしろさです。「演技の深さ」、すなわち「演技の本質」をもとめて自問自答し、いわば「生みの苦しみ」について述べられるくだりがたいへん興味ふかい。また、佐野氏の生い立ちや交友関係についても知ることができます。
貴島誠一郎、竹内銃一郎、石井輝男との対談も収録していて、私にとっては、石井輝男さんとの対談が、いちばん面白かった。清水宏成瀬巳喜男高倉健の逸話もあります。巻末には、「演技メモ」「佐野史郎出演記録」なども附いていて、お買得な一冊です。
ところで、この「岩波アクティブ新書」は、去年の十二月で廃刊になってしまいました。「実用主義」に走りすぎて、息切れしてしまったのではないか。
この新書はほかに、飯間浩明さんの本と小中千昭さんの本を持っています。いずれも好著です。

開高健『玉、砕ける』(『文藝春秋』,1978)

井上靖『人妻』(都新聞「四百字小説」,1950)

武田泰淳『もの喰う女』(『玄想』,1948)

川端康成『有難う』(『文藝春秋』,1925)

いずれも、宮本輝編『魂がふるえるとき』(文春文庫)所収。とくに心に残ったのは、「もの喰う女」です。この短篇に登場する「房子」のモデルは、武田百合子です。堀切直人さんの『本との出会い、人との遭遇』(右文書院)を読んで、あらためて読んでみたくなった作品です。