ハリー・フーディーニ

ジム・ステインメイヤー著 飯泉恵美子訳『ゾウを消せ―天才マジシャンたちの黄金時代』(河出書房新社)を時々開いては少しずつ読んでいる。この本の実質的な主人公はハリー・フーディーニだから、やはりフーディーニを論じたくだりが一番おもしろい。 心霊主…

頑張れ書肆心水

「書肆心水」の新刊二冊を本屋で見かけた。『宮崎滔天 アジア革命奇譚集』(『明治国姓爺』と『狂人譚』を収めている)と、渡辺京二『評伝 宮崎滔天』である。後者は、約三十年前に刊行された本の新版。渡辺氏は新たに附されたあとがきで、今どきこんな本を…

不世出の棋士

河口俊彦『大山康晴の晩節』(新潮文庫)は、名棋士・大山康晴の傑作評伝である。加藤一二三とか中原誠とか谷川浩司とか升田幸三とか、一般によく知られている棋士も多数登場する。面白く読んだが、感想を書くと長くなりそうなので書かない。 以下、池内紀氏…

小谷野氏の新刊から

小谷野敦『反時代的考察 なぜ悪人を殺してはいけないのか』(新曜社)を読んでいる。N君がその存在を教えてくれた「『今上天皇』という語」も入っているし、江戸幻想を批判した文章も入っている。私は、ポストモダンの余燼さえ受けようとしなかったから、一…

川田晴久関連書

地球の上に朝がくる―川田晴久読本作者: 池内紀出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2003/09メディア: 単行本 クリック: 56回この商品を含むブログ (4件) を見る 川田晴久と美空ひばり―アメリカ公演作者: 橋本治,岡村和恵出版社/メーカー: 中央公論新社発売…

購書

ABで、山崎正和『おんりい・いえすたでい'60s―脱産業化の芽生えたとき』(文春文庫)100円、浮谷東次郎『オートバイと初恋と―わが青春の遺産』(ちくま文庫)100円、橋本治『江戸にフランス革命を!(中)―江戸はなぜ難解か』(中公文庫)250円を購う。浮…

富田常雄の評伝

よしだまさし『姿三四郎と富田常雄』(本の雑誌社)を読む(まだ途中)。富田常雄には、伊皿木恒雄(または恒夫)、日夏桓夫(「恒夫」ではない)、富田常次郎(これは富田の父の名前でもある)など様々のペンネームがあったそうだ。 富田が『柔』を東京新聞…

「大漁」

くうざん本を見る経由できょうのことばメモを見て、思い出したこと。 その画像にみえる欄外の「名文・名句」は、金子みすゞの『大漁』からの引用である。わたしはこの詩を、たしか小学六年生のときに習ったと記憶している。その全文を挙げるならば次の如くで…

物理学の黎明

このところ、新書を二日に一冊のペースで読み飛ばしている。今日読み終えたのが、馬場錬成『物理学校―近代史のなかの理科学生』(中公新書ラクレ)。たいへん面白かった。 東京理科大学の前身、「東京物理学校」の誕生から閉鎖までを追ったノンフィクション…

購書日乘

3.12(日) 散髪。Kにて、長山靖生『「日本の私」をやり直す』(中公新書ラクレ)購う。直ぐに読み終えた*1。保革のねじれ。「清貧」「本当の自分」なる欺瞞。中公新書ラクレのある本を批判したくだりがあって可笑しい。しかし的を射ている(私も、ひどい本…

ハーンのエッセイ集

ラフカディオ・ヘルン 平井呈一訳『東の国から―新しい日本における幻想と研究―(上)(下)』*1(岩波文庫)を読んだ(まだ、下巻の「横濱で」を読み終えたところなのですが)。今回の「春の一括重版」に入っているもので、これが二度目の重版であるらしい。…

オリジナル文庫

ちくま文庫編集部編『ちくま文庫解説傑作集』(ちくま文庫)が届く。 まだ全部に目を通したわけではないが*1、小沢昭一「落語と私」(麻生芳伸編『落語特選・下』の解説)と坪内祐三「贅沢な旅」(小沢昭一『ぼくの浅草案内』の解説)に、川島雄三『幕末太陽…

回収絶版

早すぎた発見、忘られし論文 常識を覆す大発見に秘められた真実作者: 大江秀房発売日: 2004/11/01メディア: ペーパーバック クリック: 4回この商品を含むブログ (16件) を見るAnecdote of female scientists were abandoned from women Nobel Prize have bee…

四月の新刊文庫

来月も、気になる本がたくさん出るみたい。 冨森叡児『戦後保守党史』(岩波現代文庫)1155円 尾藤正英『江戸時代とは何か―日本史上の近世と近代』(岩波現代文庫)1155円 南博『日本人論―明治から今日まで』(岩波現代文庫)1470円 エドガー・アラン・ポオ …

「タイトル」の話で

思い出したのが、佐々木健一『タイトルの魔力―作品・人名・商品のなまえ学―』(中公新書)。フーコー好きのA先生がぜひに読むべしと仰っていたので、買って読んだ。個人的には、ゴヤやゴーギャンの出て来る第六章を面白く読んだが、第一二章に、デュシャンの…

タイトル、長すぎる。

本棚から、野口悠紀雄『「超」勉強法』(講談社)*1が出てきたのだった。 同書のコラム(「コーヒーブレイク」)を眺めていたら、「異常に長いタイトルの本」というのがあった。読んだ記憶すらない。それによれば、「最近の経済学の論文では、主要な結論を冒…

枕頭の書

すこしお金が入ったので、欲しかった櫛笥節男『宮内庁書陵部 書庫渉獵(ふみくらしょうりょう)―書写と装訂―』(おうふう)を購う。書名の「渉獵」だが、なぜ「獵」のみ旧字体で、「渉」は一画減じていないのだろうか。 それはともかく、この本は平成十四年…

古本市場で

娯楽のために読む本を確保。 ・長尾三郎『マッキンリーに死す』(講談社)105円 ・本田靖春『日本ネオ官僚論』(講談社)105円 ・中野翠『私の青空』(文春文庫)210円 ・萩原葉子『燃えるアダジオ』(中公文庫)210円 ・沢村貞子『わたしの茶の間』(光文社…

「蓑田胸喜」の時代

竹内洋「帝大粛正運動の誕生・猛攻・蹉跌」 福間良明「英語学の日本主義―松田福松の戦前と戦後」 何れも、竹内洋・佐藤卓己編『日本主義的教養の時代―大学批判の古層』(柏書房)所収の論文。 竹内論文*1は、蓑田胸喜の小伝としても読める。「蓑田=文化犯罪…

楚囚之詩

きのうTで購った(八百円也)、『定本 庄司淺水著作集 書誌篇 第二巻』(出版ニュース社)を読んでいたら、北村透谷『楚囚之詩』のことが出て来た。 この稀覯書にまつわるエピソードは、本好きの間ではわりと有名であろう。 透谷の『楚囚之詩』(明治二十二…

竹内文書

向井透史『早稲田古本屋日録』(右文書院)を購入。 高山文彦『麻原彰晃の誕生』(文春新書)を読む。「第3章 オウム前夜」に、「竹内文書」「ヒヒイロカネ」のことが出て来る。 「竹内文書」といえば天津教だが、この天津教は戦後になって、超国家主義の温…

坐職の読むや

加藤郁乎『坐職の読むや』(みすず書房)が欲しいが、値の張ること! こういう本こそ、座右に備えて味読したいのに。以下、みすず書房のHPより「孫引き」(コピペ)。 さきごろ、北静盧の『梅園日記』を繰り直し、久しぶりに充実した気分を催した。家根屋の…

UFOの時代

昨日、木原善彦『UFOとポストモダン』(平凡社新書)を読んだ*1。 木原氏は、「UFO神話」を年代別に三段階――すなわち「空飛ぶ円盤神話」「エイリアン神話」「ポストUFO神話」――に分けている。一時期話題になった、「スカイフィッシュ」や「ミレニアム・バグ…

最近買った本(2.10〜2.16)

今日は古本市へ行けたので、旧大系等を購った。 ・大石慎三郎『大江戸史話』(中公文庫)280円 ・山岸徳平校注『日本古典文學大系 源氏物語』(岩波書店)五冊揃2000円 ・『講座国語史2 音韻史・文字史』(大修館書店)1000円 ・島尾敏雄『死の棘日記』(新…

ことばの規範とは

安田敏朗『辞書の政治学―ことばの規範とはなにか』(平凡社)。 まあ面白かったが、第四章の論はやや飛躍しているような気もする。 「辞書は読んでこそ面白い」(あるいは批判的に読む)という言説(というほど大袈裟でもないが)は、(芥川龍之介の「猫」は…

池辺三山

黒岩比佐子氏の『日露戦争 勝利のあとの誤算』(文春新書)は、同書を取り上げた「本よみうり堂」(2005.10.30)に、「関心の中心は、漱石を朝日新聞に入社させたことで知られる池辺三山。」とあるように、池辺三山の評伝としても読める。私は特に、四迷、蘆…

辞書の網羅主義やら何やら

茶木則雄『帰りたくない! 神楽坂下書店員フーテン日記』(光文社知恵の森文庫)、三島由紀夫『対談集 源泉の感情』(河出文庫)を一割引で購う。 安田敏朗氏の『辞書の政治学』(平凡社)が面白い。「国家・文明・歴史」系列の辞書(『言海』等)と「国民・…

買った本

最近(2.1〜2.8)買った本。 ・『新小辞林 特装版(第二版)』(三省堂)210円 ・矢崎源九郎『日本の外来語』(岩波新書)380円…拾い読みする。 ・小松英雄『いろはうた―日本語史へのいざない』(中公新書)400円…読了。 ・五来重『高野聖』(角川新書)210…

あゝ思ひ出の懷かしさよ。

水上瀧太郎『山の手の子』 集英社版『日本文学全集87 名作集(二)』所収。 水上瀧太郎の処女作です。明治四十四(1911)年、『三田文学』に発表。「山の手の子」と「町っ子」が対照的に描かれています。なぜ夏は行ってしまうのか。淡い恋の思い出。なんと…

再話ふう掌篇の愉しみ

森銑三『新編 物いう小箱』(講談社文芸文庫) 2005.3.10第一刷。 『唐宋(代)伝奇集』とか『聊齋志異』とかいった類の「怪異譚」が好きです(そのほとんどは、岩波文庫の抄録版で読んでいます。国内のものでは、たとえば『耳嚢』)。いずれも「再話風」の…