不世出の棋士

大山康晴の晩節 (新潮文庫)
河口俊彦大山康晴の晩節』(新潮文庫)は、名棋士大山康晴の傑作評伝である。加藤一二三とか中原誠とか谷川浩司とか升田幸三とか、一般によく知られている棋士も多数登場する。面白く読んだが、感想を書くと長くなりそうなので書かない。
以下、池内紀氏の「解説」より。「この怪物的棋士については、さまざまな人により、さまざまな面から語られてきた。ここでは『晩節』をめぐっている。とても厄介なことなのだ。将棋の天才を語るなかで、なろうことならあっさりとすませたい。最実力者大山康晴は将棋連盟の会長をつとめ、棋界政治をとりしきった。晩節を全うしたのか、晩節を汚したのか、そのきわどい線上のこともいわなくてはならない。(中略)書き上げるのに二十年かかったのも当然である。もっとも正統的で、もっとも難しい方法をとったからだ。棋士を語るのに棋譜に勝るものはない。当人が人生を賭け、全力を傾けた『作品』であって、おのずとその人がもっとも赤裸々にあらわれる」(pp.361-62)。