最終日

最終日は広島県。三日間のうちで、いちばん天気のよい日。
バスで尾道へ。文学のこみちを歩いて、千光寺参り。「おのみち文学の館(文学記念室・志賀直哉旧居・中村憲吉旧居)」にも行く。とくに「文学記念室」には、林芙美子の写真や遺品が多数展示してあって、成瀬巳喜男作品が好きな私にとってはなかなか楽しめる内容でした。
また『怪傑黒頭巾』の原作者高垣眸、『くもとちゅうりっぷ』の原作者横山美智子にかんする資料も展示してありました。
「おのみち文学の館」でかなりの時間を過ごしてしまったので、風情のある坂道を下り、とりあえず中央商店街へ向かう。アーケードを抜けたところに「尾道書房」、その向かいに「画文堂」、それからアーケード内に「ブックランド」があったが、まずはちらちらと見るだけで我慢。
K君、M君、私の三人でアーケードを東に進み、それが途切れたところにある「たに」で午食。尾道ラーメンが美味。店から出たところで、浄土寺をまわってきたMさんとばったり会う。
すこしだけ時間が余ったので、古本屋に行こうという流れになり、西に戻ってまずは尾道書房。百均は目で追うだけ。中に二、三分だけ滞在。
つづいて画文堂へ。まずは二階から見る。なかなか面白い本が揃っているので、思いのほか時間を食ってしまう。一冊だけ、新書を購う。
・廣末保『四谷怪談―悪意と笑い―』(岩波新書)320円
一階には、肌色の中公文庫、ちくま文庫が結構置いてあり、もう少し見たかったのですが、残念ながら時間切れ。四人で慌ててバスに戻る。尾道郷土資料館に立寄って帰る。
帰途、車内では角川春樹時をかける少女』(1997)を観ました。オリジナル、というか原田知世版『時をかける少女』(1983)は中学生の時分に観たので、ディテイルはほとんど覚えていないのですが、ラストの展開はずいぶん変えてありました。主演の中本奈奈、中村俊介は新人として出演していたようです。
個人的には、芳山和子(中本奈奈)の祖母を演ずる久我美子が気になりました。成瀬巳喜男の『春のめざめ』(1947)でデビューし、『続不良少女』(1950)や『また逢う日まで』(1950)、『噂の女』(1954)などに主演していますが、今井正にごりえ』(1953)の第二話「大つごもり」における薄倖の「みね」役も、なかなかのものでした。この『にごりえ』は、当時のキネ旬で、小津の『東京物語』を押さえて第一位に選出されています。

(追記)久我美子は『春のめざめ』でデビューした、というのは私の勘違いでした。すみません。久我は同年公開の『四つの恋の物語』(1947)の第一話「初恋」(豊田四郎監督)で、すでに銀幕デビューを果しています。