成瀬映画にしては…

『君と行く路』(1936,P.C.L映画製作所)

演出・脚本:成瀬巳喜男、原作:三宅由起子「春愁記」、撮影:鈴木博
この作品はもともと舞台劇(「春愁記」は三宅由起子の遺作です)でした。舞台劇と映画で配役が同じなのは、佐伯秀男(天沼夕次)と清川玉枝(母)のみ。成瀬巳喜男の作品にしては、あまりパッとしません。さすがに、清川や藤原釜足(空木)などは馴れたものですが、主役のうち、とくに山懸直代(尾上霞)の演技が、ちょっと拙いのです。
脚本の「救われなさ」にも、もうちょっとヒネりをきかせることができたでしょうし、また清川演ずる「母」も、一個のキャラクターとしては確立されていない感があり、どこか中途半端です。