シリーズ民間日本学者

曇り。
所用あって出る。「お供本」は、たまたま目にとまった筒井康隆『腹立半分日記』(文春文庫)。
南陀楼綾繁氏が、文春文庫のうちで最も好きな「日記本」として挙げておられたので、気になってブックオフで買っておいたものだ。
たしか坪内祐三氏がこの日記に影響を受け、公開日記の日付を「某月某日」ではなく、ちゃんと明記するようにした、ということを書いている。それを何処で読んだのか思い出せずに、帰宅してから、あたりをつけて『半歩遅れの読書術Ⅰ―私のとっておきの愉しみかた―』(日本経済新聞社)を披いてみるが、これではない。
しかし、例えば次のような箇所が気になったりする。
半歩遅れの読書術〈1〉私のとっておきの愉しみかた

知る人は少ないかもしれないが、今はなき出版社リブロポートから「シリーズ民間日本学者」というシリーズ物が刊行されていた。関根弘の『花田清輝』や鶴見俊輔の『夢野久作』、山下恒夫の『石井研堂』といった魅力的なラインナップが並ぶ。その内の一冊として津野(海太郎―引用者)さんの『坪内逍遥』も予定されていたのだ。それが版元を変えて再開されたわけだ。嬉しい(けれど中薗英助の『岸田吟香』や高瀬善夫の『江原素六』や阿奈井文彦の『梅原北明』といった作品は幻に終わってしまったのだろうか)。(坪内祐三「本を分解する」『半歩遅れの読書術Ⅰ』日本経済新聞社所収,pp.99-100)

これが気になったのは、鶴見俊輔夢野久作―迷宮の住人』(双葉文庫)を数箇月まえに読んでいたからなのだが、この「解説」(中沢新一)によって、中沢氏の『寺田寅彦』も「シリーズ民間日本学者」の一冊として刊行される予定だったことを知った。他には確か、いいだもも氏の『黒岩涙香』や松本健一氏の『出口王仁三郎』が入っていた筈だが、文庫化されたものって、『夢野久作』以外にあるのだろうか。