世の中には秘密が多すぎる

◆テレビ欄を眺めていると、「マル秘」が、やたら目につくときがある。今日もそうだった。大阪版の『朝日新聞』で実際に数えてみると……「毎日テレビ」(TBS系)に3つ、「ABCテレビ」(テレビ朝日系)に1つ、「関西テレビ」(フジテレビ系)に2つ、「読売テレビ」(日本テレビ系)に6つ、「テレビ大阪」(テレビ東京系)に3つ、そして「サンテレビ」に1つ、計16個のマル秘情報が惜しげもなく公開されている模様。夕刊も合わせて見ると、「ABCテレビ」にさらに2つ、また「読売テレビ」にも1つのマル秘情報がみつかった。「マル秘真相」、「マル秘ドッキリ」「マル秘もうけ術」、「マル秘穴場」、……。「男が好きな体のパーツ&髪形&マル秘」と、何を言いたいのかさっぱりわからないのもあるし、「人気マル秘飲茶」と、完全に矛盾してしまっているのもある。ひどいときは、同一番組内に「マル秘」を五つも六つも多用することさえある。
この「マル秘」、元来は機密事項をさすはずだが、いつごろから、これほど大安売りされるようになったのだろう。テレビ業界では、「スターどっきりマル秘報告」(1976頃〜)以降であろうか。よく知らないが。
そういえば田中登に、『マル秘 色情めす市場』(1974日活)という作品があった。映画タイトルでは、それ以前にも、「東映ポルノ路線」作品が「マル秘」をよく用いていた気がするが、ぱっと思い出せない。ともかく、映画タイトルの「マル秘」は、ポルノ映画やピンク映画に限られそうだ。
ところで「マル秘」というのは、「しるし」(『日本国語大辞典 第二版』)とか「記号」(『明鏡国語辞典』)とかいった位置づけのものだが、『句読点、記号・符号活用辞典。』(小学館)には載っていない。「しろまる」の解説本文に、「マル得」「マル公」などの用法とともに含めて挙げておいてよさそうな気もするが。