秋の古本まつり

今日買ってきた本

朝から天気が良いので、やっぱり知恩寺の古本まつりへ行くことにした。
午過ぎ、会場に着く。山門から入り、萩書房・紫陽書院あたりから見てまわる。
紫陽書院で、淺野信『俗語の考察』(三省堂)600円、読売新聞社会部『東京ことば』(読売新聞社)500円、あらかわそおべい*1『外來語辭典』(アテネ文庫)300円を買う。一冊300円のアテネ文庫が、二十冊ほど置いてあった。
つづいて三密堂書店で、吉川義雄『芸能・放送おもてうら』(向陽書房)、中村幸彦校注『春色梅兒譽美』(岩波書店)、濱田敦『古代日本語』(大八洲出版古文化叢刊)の三冊を購う。三冊で500円(一冊だと200円)。『芸能・放送おもてうら』が200円だなんて、本当にいいのだろうか*2
この本、たとえば徳川夢声については、次のように書いている。

私の知っている、つまり、大正から昭和の今日に至るまでの話術の三名人といえば、前にも書いたように、典山、痴遊、夢声の三人をあげる。(中略)
講談には貞山、伯鶴がいたが、彼らには新しい世相描写はできない。明治の人間、日露戦争頃までは語れても、大正以降の人情となると、もう語れまい。だから、現代の物語をやるのは夢声ということになる。誇張しない芸であったからマイクにのったのであろうが、現代人の物語というのは、この夢声でできたのではないかと思う。だから、私は夢声のことを、昭和の語り部と呼ぶのである。(p.32-34)

それから大殿のほう、つまり北へと向かう。津田書店。「文庫本7冊500円」コーナーを覗く。石沢英太郎『ミステリー映画館』(講談社文庫)、五木寛之・松永伍一『日本幻想紀行(上)(下)』(講談社文庫)、岩下俊作無法松の一生』(角川文庫)など七冊をえらぶ。
さらに、通りを挟んで西へ。石川古本店。「新書・文庫10冊500円コーナー」があったので、ここで金田一春彦『ことばの四季』(河出新書)、岡本夏木『ことばと発達』(岩波新書)、山口瞳『新入社員諸君!』(ポケット文春)、丹羽文雄『蕩児帰郷』(中公文庫)、丸谷才一『猫だつて夢を見る』(文春文庫)、親鸞 金子大栄校訂『教行信証』(岩波文庫)など十冊を買う。
陽射しが強いが、暖かくて良い。自然に気分も晴れてくる。
百円均一コーナーではたいしたものが見つからなかったので、もと来た道を戻る。山門のあたりまで戻って来たとき、配布されていたチラシで、今日から「山本善行ノ世界」(即売会)が、四条河原町阪急で開催されていることを知る。せっかくなので、ついでに立寄っておこうかと考える。
百万遍からバスに乗る。車中で石沢英太郎『ミステリー映画館』を読む。五十本の「ミステリー映画」を紹介している。これは目次が無いのだが、前の所有者(?)がワープロで作成した目次を挟んでくれていたので助かった。『サイコ』や『情婦』が入っているのはもちろんだが、『悪魔の手毬唄』、それからなんと『切腹』まで入っている。『切腹』とはやや奇異に感じられるが、著者は、「シナリオが橋本忍だけあって、ミステリー手法が濃厚である」(p.122)と書き、ナラタージュ挿入のシネマトゥルギーを絶讃している。
四条河原町でバスを降り、阪急五階の「催場」へ。意想外にこぢんまりとしており、客は少なかったが、欲しい本が沢山見つかる。『sumus[別冊]まるごと一冊 中公文庫』700円、ロレンス・ダレル 福田陸太郎 山田良成訳『黒い手帖』(二見書房)カバ缺500円、福永武彦加田伶太郎全集』(新潮文庫)800円を買う。そういえば昨秋、ダレルの『アレキサンドリア四重奏』が河出文庫に入る、という話が持ち上がったが、その後どうなってしまったのだろうか。まあ気長に待つとしよう。
四条から阪急に乗って帰る。

*1:この人の名前、「あらかわそおべえ」だったり「あらかわそおべい」だったり「荒川惣兵衛」だったりと、よく分らない。

*2:某所にて、3000円の値がついていたのを見たことがある。