『黒いハンカチ』

晴れ。夜雨。午後大学。U君と帰る。
黒いハンカチ (創元推理文庫)
一日一篇ずつ読んでいた、小沼丹『黒いハンカチ』(創元推理文庫)をやっと読了。面白かった。私は、これを主に通学時の車中で読んでいた。坪内祐三氏も、「車中や旅先、あるいはプールサイドのデッキチェアでの『夏の読書』、いわゆるサマー・リーディングにぴったりな一冊である。静かで懐しい夏の時間を過すことが出来るだろう」(『文庫本福袋』文藝春秋,p.377)と書いているように、「屋内ではない何処か」で読むのにぴったりな小品集だと思った。連作短篇で、「季節の推移を追って話が進行する」のだが、これは意図的なものではなかったと、小沼自身が「あとがき」に書いている。
探偵の名が可笑しくて、「ニシ・アズマ」(「スクェア・ダンス」にちらと登場する彼女の妹は「ミナミコ」)というのだが、彼女は万能のアームチェア・ディテクティヴではない。しかし、そこがいい。「蛇」「手袋」などのように、謎は謎のまま残されるのだ。