あまり楽しくない文庫選び

雨。
午後から大学。午後七時半に帰る。
上村行世編『エピソードでつづる学生食生活史[戦前編]』(上村行世*1)を読む。これは面白い。引用*2が多く、説明が最小限に抑えられているのがかえって良い。
小松茂美天皇の書』(文春新書)を購い、ぱらぱらとやる。いわゆる「宸翰」が写真で載っていて、それらを見るだけでも結構楽しめる。
さて、明日から東京へ行くのだが*3、車中で読む論文または本を決めかねている。特に本。
一冊は、さきほど決めた。志多三郎『街の古本屋入門―売るとき、買うときの必読書』(光文社文庫)だ。田中美穂氏が「早稲田古本村通信第103号」に、「わたしにとっては自分が古本屋であるための "背骨"のような本」と書いていたので、ちょっと読み直してみようかな、と。
もう一冊くらい、持っておきたい。ニモツになるので、できれば文庫本がいい。『街の古本屋入門』はすぐに読んでしまいそうだから、大作がいいかも知れんな。
フレイザー 永橋卓介訳『金枝篇』(岩波文庫)はどうか。全五冊だが、そのうちの二冊でも持ってゆけばもう充分だろう(第一冊は四年前に読んだことがある*4)。いや、それとも、富田常雄武蔵坊弁慶』(講談社文庫、全十冊)にすべきか。あるいはまた、松本清張西海道談綺』(文春文庫、全八冊*5)というテもある*6。この小説は様々の薀蓄が鏤められていて、とにかく面白いらしい。たとえば第一巻の p.5 (冒頭部)にも、「痛いというのをニガルというのはこの辺(美作の真島郡勝山―引用者)の方言である」というのがあったりする。
しかし、面白すぎて続きが気になってしまうものはよくないかもしれない。東京から帰ってきたら、その小説ばかり読んでしまいそうだから。ということで、富田常雄松本清張はやはり却下かなぁ。うーむ。……とかなんとか言いながら、行きは緊張のあまり、読書どころでなさそうなのは、もう目に見えているのだけれど。

明日から日曜日まで、更新をお休みします。

*1:非売品。後、三省堂から刊行されたらしい。

*2:生方敏郎扇谷正造、服部誠一、徳冨蘆花、佐々木八郎、坪内逍遥保科孝一木下順二などの著作から。

*3:古書肆をめぐれそうにないのが残念。

*4:一時期、ちょっとだけカブレて(それも「白川静」経由なのである)、類感呪術感染呪術というタームをレポートに使ったりした。

*5:現在は新装版が出ている。こちらは全四冊。

*6:「清張ファン」を自任しながら、「清張時代小説の集大成」といわれる『西海道談綺』は、恥ずかしながら未読なのである。読みかけてすらないのである。