ワゴンセール。

午から梅田に行く用事があったので、ついでにワゴンセールへ。
鍾明善『中國書法簡史』(河北美術出版社)300円、土岐哀果(善麿)『NAKIWARAI』(ほるぷ出版)300円、今井田勲『編集中記』(書肆季節社)300円、『大阪二世会五〇年の歩み―古書とともに昭和・平成の扉を開いて』300円、京都醫學會『京都醫學會雜誌』二冊200×2=400円、西尾實『國文學入門』(アテネ文庫)100円など購入。
『NAKIWARAI』は、もと「ローマ字ひろめ會」から明治四十三(1910)年に出たもので、私が買ったのは、昭和五十六(1981)年に「ほるぷ出版」から「詩歌文学館」の一冊として復刻刊行されたものである。国語改革の話題になると、必ずといっていいほど土岐善麿の名前が出て来るが、彼の著作を買うのは実は初めてである。同書は、石川啄木が評したことでも有名だ。
また、『京都醫學會雜誌』第八十五號(明治二十八年一月二十五日發行)の「醫事小談」のコーナーには、「恙蟲病調査復命書」(北里柴三郎)というのが載っていて(pp.29-63)、これが滅法面白く(いずれここで紹介したい)、つい買ってしまった。
ところで、恙虫が古来妖怪の一種であると信じられていたことはご存じであろうか。このほど文庫化された、竹原春泉画『桃山人夜話〜絵本百物語〜』(角川ソフィア文庫)には以下のようにある。

むかしつゝが虫(むし)といふむし出(いで)て人をさし殺(ころ)しけるとぞされば今(いま)の世(よ)にもさはりなき事(こと)をつゝがなしといへり下学集(かがくしう)などにも見ゆ

これは画に添えられた画図文。桃(花)山人(桃華園三千麿)による解説は、以下のようである。

桃山人夜話―絵本百物語 (角川ソフィア文庫)
第卅八 恙虫
斉明天皇(さいめいてんわう)の御時、石見八上(いわみやがみ)の山奥(やまをく)に、つゝがといへるむし有(あり)て、夜(よ)は人家(じんか)に入(いり)て人(ひと)のねむりをうかゞひ、生血(せいけつ)をすひて殺(ころ)さるゝもの多(おほ)し。博士某(はかせそれ)に仰付(あふせつけ)られ、此虫(このむし)を封(ふう)じさせ給(たま)ひしより、民間(みんかん)に其愁(そのうれい)なし。是(これ)よりして無事(ぶじ)なることをつゝがなしとは云(いひ)けるとぞ。ある説(せつ)には、悪(あ)しきことなしと云義(いふぎ)を書(かき)たがへて恙(つゝが)と云始(いひそめ)たりと有(あり)。何(いづ)れか然(しか)るや。(原文ママ,p.112)

因みに、同書p.45の春泉による恙虫の画は、江馬務『日本妖怪変化史』(中公文庫BIBLIO)のp.74などに引かれているが、江馬によると、『節用集』にも恙虫の記述があるという。
どの「節用集」なのかは不明だが、今度見てみることにしよう。