OMM

随筆滝沢馬琴 (岩波文庫)■『考える人』の特集があちこちで紹介されているので、それに関連して。「評伝」で特に私の気に入っているもののひとつに真山青果『随筆滝沢馬琴』(岩波文庫、2000)が有る。学界でこの「随筆」の評価がどうなっているのかは寡聞にして知らないのだが*1、これは予備知識なしで読んでも十分に面白く、そして文章も良く、対象から適度に距離を取る方途をまた好もしく感じたものであった。
真山青果といえば、大村彦次郎『文士のいる風景』(ちくま文庫)などを引くまでもなく、原稿の二重売り事件や癇癪持ちでも有名だったが、しかし日夏耿之介がかれを擁護する文章を書いている(『日夏耿之介文集』ちくま学芸文庫所収)。なお「文藝徃來」(1949.3)には、日夏耿之介「眞山青果の隨筆馬琴論」という文章が入っており、そこでも青果擁護論が展開されている。日夏によると当時の「國文學社會は、妙に冷たく(『随筆滝沢馬琴』を――引用者)默過して了つた」けれども、同書は「所謂る學者が一向に云つてはくれぬことを、能くずばりと云ひのけてくれた快感に充ち滿ちた」好著であった、という。
■OMM
『校正圓機活法 韻學之部』500
加藤美侖『手紙文章必須要訣 是丈は心得おくべし』誠文堂500
三省堂編『書齋と讀書』三省堂300
徳川夢聲『悲觀樂觀』文藝春秋新社300
『現代詩人全集(8) 横瀬夜雨集』新潮文庫300
佐佐木信綱『信綱文集』改造文庫200
金田一京助石川啄木改造文庫200
窪田空穂『短歌に入る道』新潮文庫200
「国文学 解釈と鑑賞」692(特集「『ことば』をあつめる」)同872(特集「三上章と奥田靖雄」)各200
國文學 46-2 文法への新しい視点」學燈社200
杉本つとむ『現代語』現代教養文庫200
安東次男『芭蕉』中公文庫100
小林信彦『地獄の読書録』集英社文庫100
江戸川乱歩編『世界短編傑作集2』創元推理文庫100
※『是丈は〜』は第八篇。まだ、これと第一篇(社交要訣)しか持っていない。
※『書齋と讀書』は前から欲しかった。「書齋」連載記事を纏めたもの。執筆者は、平田禿木長澤規矩也村松梢風三浦圭三河竹繁俊青野季吉、太宰施門、茅野蕭々、日夏耿之介清水幾太郎生方敏郎、平野零兒、松本喜一恩地孝四郎石川欣一木村毅野尻抱影森銑三柴田宵曲植村清二……等々と、錚々たる面々。
※Y書房の改造文庫(200〜500、蔵印有)、新潮文庫(200〜500、蔵印有)、『国文学』(200均)コーナーはなかなか壮観だった。
※「地獄の読書録」はちくま文庫版も持っているが、集英社文庫版のカバーのほうが好みにあう。同じ本屋の棚にちくま文庫版もあったが、集英社文庫版よりも状態が悪くて500円。何故?
※乱歩編の『世界短編傑作集』は旧版(カバーは松田正久)を集めていたが、これで揃った。昨秋東京で3、4巻(しか置いてなかった)を、昨年末に天牛の50均で1、5巻(しか置いてなかった)を入手し、今回K書店で2巻(しか置いてなかった)を入手。妙に巧い具合に行ったものだ。
※文部省『書牘日用文』(線装)800は買っておけばよかったと、ちょっと後悔。

*1:書名が「随筆曲亭馬琴」でないのもまた謎である(「中央公論」連載時のタイトルは「曲亭馬琴に就ての夜話」)。