OMMでの収穫など

横尾忠則の新刊、『悩みも迷いも若者の特技だと思えば気にすることないですよ。皆そうして大人になっていくわけだから。ぼくなんかも悩みと迷いの天才だったですよ。悩みも迷いもないところには進歩もないと思って好きな仕事なら何でもいい。見つけてやってください。』(勉誠出版)を本屋で見かけた。勉誠出版HPに、「ご予約の際は『悩み』とお申し付け下さい」、とあるのが可笑しい。
◆こないだのOMM、会場が(いつもと較べて)狭かったこともあって、そう沢山は買わなかった。購入したのは、まず小宮豐隆編『寺田寅彦隨筆集(一)〜(五)』(岩波文庫)100円×5=500円。ようやく。初版、しかもなかなかの美本。サンデー毎日編『ものしり試合 日置昌一対談集』(現代思潮社)500円。これは、某ブログで見て欲しくなった本。春日政治『國語叢考』(新日本圖書)500円。大庭脩『江戸時代の日中秘話』(東方選書)500円。林甕臣『日本語源學 全』(建設社)800円。これは、いわゆる「一音一義説」で有名。今日ではかえりみられることの殆ど無い本だけれども(日国の語源説欄で書名を見かけるくらいか)、函入800円は安いとおもったので。桑木嚴翼『書物と世間』(春秋社)200円(これも安いのではないかとおもう)など十五冊。
日夏耿之介荷風文学』(平凡社ライブラリー)の「解説」(富士川義之)に、「何とも不思議なのは、これほどまで自分を偏愛してくれた日夏への言及が、荷風には全く欠如していることである。『断腸亭日乗』を見ても、日夏に関しては一言半句の記載も見当たらない。他の随筆や小品なども同様である。そのためだろうか、現代の代表的な荷風論の著者たち――野口冨士男磯田光一川本三郎――の批評書にも日夏の名前は見出せない」(p.307)とあるが、確かにこれは不可思議なことである。
ただ『下谷叢話』(岩波文庫)の「解説」(成瀬哲生)に、日夏の「雑然紛然たる雑叙」なる評を引き、正宗白鳥荷風に対する(こと「考証的伝記」というジャンルに於ける)否定的見解の傍証としている箇所があったので(p.290)、いちおうメモだけしておこう。