◆朝出る、お供本は柏原兵三『長い道』(中公文庫)。柏原はこの作品で芥川賞をとりたかったらしい。文章も、実に素直な感じがして、好感がもてる。藤子不二雄Aの漫画『少年時代』、篠田正浩の同名映画*1の原作であるせいか、郷愁とか懐古趣味とかいった側面から語られることも多いが、それは気の毒である、柏原がこれをいわば「自伝的小説」という形に仮託したのは照れ隠しのためだったのではあるまいか。柏原がこのようなビルドゥングスロマンふうの作品を多く手がけたのは、ドイツ文学を専攻したことの影響もあるのかしら。
天神さんへ行った。成果は、まあ、そこそこ。
- つだ・さうきち『ニホン人の思想的態度』中央公論社100円
- 三浦つとむ『こころとことば』季節社100円
- 吉澤義則『源氏隨攷』晃文社100円
- 阿部次郎『秋窓記』岩波書店100円
- 一色次郎『左手の日記』青蛾書房100円
- 『ほうげん 第3号』二松学舎大学100円
- 頼襄 後藤機 校『山陽詩鈔』東雲堂100円
- 大西雅雄『國語の發音』大學書林200円
- 古谷綱武『男の考え方』河出新書200円
- 渡辺一夫編『師・友・読書』河出新書300円
- 柳田國男『昔話覺書』三省堂300円
- 石坂洋次郎『石中先生行状記』新潮社100円
- 渡部昇一 谷沢永一『読書有朋』大修館書店100円
- 武田祐吉校訂『校本日本靈異記』明世堂100円
- 板橋倫行校註『日本靈異記』角川文庫100円
- 千田是也『演劇入門』岩波新書50円
- P.トラッドギル 土田滋訳『言語と社会』岩波新書50円
など。肥後郷土誌の『呼ぶ』二冊100円、また他に幾冊か買ったが多分ダブり。津田左右吉といえば岩波新書の『支那思想と日本』(のち『シナ思想と日本』に改題、わたしが所有しているのも改題後の版)が抜群におもしろく、個人的には新書オールタイムベスト10に選出したいくらいなのだが(のちに『座右の名文』を読んで、高島俊男氏もこの書に感銘を受けたと知った)、現在品切とのことで残念、でも初版の「まえがき」なら『津田左右吉歴史論集』(岩波文庫)で読める。この本には物議をかもしたことで有名な(その経緯については奥武則『論壇の戦後史』等にくわしい)『世界』寄稿論文(「日本歴史の研究に於ける科学的態度」「建国の事情と万世一系の思想」)も収めてある。