モブ・シーンの力

『決闘 高田の馬場』(1937,日活京都撮影所)

監督:マキノ正博稲垣浩、原作・脚色:牧陶三、撮影:三井六三郎、石本秀雄
お馴染みの講談、堀部安兵衛もの「高田馬場の決闘」をもとにしています。ヴィデオ化される前の題名は、『血煙 高田の馬場』。監督としてふたりの名前が挙がっていますが、実質的な監督はマキノ氏ひとりです。
なによりも、まずはラストのモブ・シーンがすごい。とにかく実際にご覧になれば、お分りになることでしょう。「映画の規格をはずれたすごさ」(故・瀬戸川猛資さんのことば)を感じさせるのです。また有名なのが、バンツマの「韋駄天走り」*1とラストの大立回り=「十八人斬り」*2でしょうが、脚本の妙にも注目。
まずは、萱野六郎左衛門(香川良介)の置手紙を、中山安兵衛(阪東妻三郎)がなかなか読もうとしないシーン。あるいは、地蔵を前にして安兵衛が「南無八幡大菩薩…」とやるシーン。
それから、「さはさりながらさりながら…」とひとくさり打つ講釈師・楽々亭貞山(志村喬)の存在も、忘れがたいものがあります。

*1:ひところ、あるCMでも使われていました。

*2:この振付は、ジャズダンスをもとにしているというのだから驚きます。