戦後を生きた男の証

長尾三郎『週刊誌血風録』(講談社文庫)

週刊誌血風録 (講談社文庫)
2004.12.15第一刷。文庫オリジナル。「文庫オリジナル」とか、「文庫書下ろし」とかいう惹句はあまり好きではないのですが(なかにはお手軽本も混じっているだろうから)、この本は読み応えがありました。ときおり、六十年安保世代のことばで語っている箇所があって、やや気にはなりましたが、たいへん面白く読みました。
まずは、冒頭の「OL」誕生秘話がなかなか衝撃的で、アラン・ドロンに密着したり、吉展ちゃん事件を取材したりする過程で、昭和史の一齣を彩る事件や人物がたくさん登場します。たとえば、安藤昇吉永小百合高見順三島由紀夫事件、連合赤軍事件、八海事件などなど…。
それにしても、長尾氏を取り巻く人物たちの出自の見事さよ。川鍋孝文さんの伯父(母親の兄)は鈴木信太郎、野間惟道さんは阿南惟幾の五男だそうです。羨ましくもあります。
ところで、帯には「もう一つの昭和史」とあるのですが、これは「もう一つの戦後史」と改められるべきでしょう。