(id:vanjacketei)さんから、 Musical Baton というものが回ってきました。
「この人の答えを聞きたいと思った方々」のなかに加えて頂いて、たいへん嬉しくおもいます。けれどもそんなに沢山の音楽を聴いてきたわけではないので(これから出会うであろう「過去」の音楽もたくさんあることでしょうし)、ご期待に応えられないのがつらいところ。
しかし奇を衒うことはせずに、ありのままを書こうとおもいます。
【Total volume of music files on my computer (コンピュータ内の音楽ファイルの容量)】
421.65MB。もっぱらCDで聴いています。たくさん入れておくと、「ながら勉強」をしてしまいそうで怖いので、『懐メロクッキー』、『J’sポップスの巨人たち(第一弾と第二弾=80’sポップス編)』*1、『タイムスリップグリコ(第一弾、第二弾、第三弾=グループサウンズ編)』、タカラ『昭和おもひで歌謡』などのおまけCD*2の曲と、その他四、五曲だけ(そのうちの一曲が後述の「東京オリンピックマーチ」)入れています。
【Song playing right now (今聞いている曲) 】
・古関裕而「東京オリンピックマーチ」
もともとマーチは好きで、ビゼー「美しいパースの娘」の行進曲や、サン=サーンス「フランス軍隊行進曲」、シベリウス「カレリア」の行進曲、グリーグ「忠誠行進曲」は愛聴しています。国内のものでは、瀬戸口藤吉の「軍艦行進曲」とか、黛敏郎の「スポーツ行進曲」とかが有名ですが、特に私の気に入っているのが、「東京オリンピックマーチ」。つい二箇月ほどまえ、市川崑の『東京オリンピック』(1965)を観てからこの曲がすっかり好きになってしまい(高校時代の体育祭などで、何度も聴く機会はあったのですが)、爾来、何度となく聴いています。
【The last CD I bought (最後に買った CD) 】
・Antonin Dvorak「Concerto for violoncello and Orchestra in B minor」
ピエール・フルニエ(チェロ)、ジョージ・セル&ベルリン・フィル。エルガーの「チェロ協奏曲ホ短調」とのカップリング(こちらはウォーレンスタインが指揮)ですが、ドヴォルザークの協奏曲のほうが好き。このCDは、時々行く小さなレコード店の「特価販売コーナー」で売られていたもので、なんと五百円でした。
【Five songs(tunes) I listen to a lot, or that mean a lot to me (よく聞く、または特別な思い入れのある 5 曲) 】
・Anton Bruckner「Symphony No.8 in C minor」
改訂版(ヨーゼフ・シャルクほかによる)。ただし、ハンス・クナッパーツブッシュ&ミュンヘン・フィル(1963)の、という「但し書き」がつきます。おなじクナッパーツブッシュが振った五番や、ギュンター・ヴァントの第四番「ロマンティック」、カラヤンの第七番など、ブルックナーの交響曲でよく聴いているものはほかにもありますが、この八番との出会いは、私にとって衝撃的でした(とくに最終楽章)。しかし鈴木淳史さんは、交響曲としては秀作とみなしながらも、ブルックナーの交響曲にしては「大きいばかりで、スカスカな作品だ」とこき下ろし、初稿の生々しさのほうがむしろブルックナーらしい、と書いています(『クラシックCD名盤バトル』)。まあそれは玄人の意見なので、私のような素人にとっては、出来や内容なんかはべつにどうでもいい。ところで、マリオン・クナッパーツブッシュ夫人の回想によると、クナッパーツブッシュはこの「第八番」と、ワーグナーの「パルジファル」を最も愛していたのだそうです。ミュンヘン・フィルとの第八番は、重厚で、かつテンポもゆったり。「悠久のブルックナー」といわれる所以です。
・The Turtles「Happy Together」
じつをいうと、Turtles の曲はこれだけしか聴いたことがありません(いつか「Elenore」くらいは聴いてみよう、とおもっています)。一九六〇年代を振り返るテレビ番組かなにか(ラジオだったかもしれない)でこの曲を知り、『アダプテーション』(2002)のエンディングに使用されているのを聴いて(本当はウィーザーのカバー・ヴァージョンを使う予定だったとか)、すっかり気に入ってしまいました。日本でも誰かがカバーしていたはずですが、忘れました。
・PYG「自由に歩いて愛して」
イントロのギターの旋律が印象的な作品。高校生のころにはじめて聴いて、かつて日本にはこんなにカッコ良い曲があったのか、とおどろきました。『タイムスリップグリコ(グループサウンズ編)』に収録されていないのが残念。沢田研二(タイガース)と萩原健一(テンプターズ)の二人がリードヴォーカル、井上堯之(スパイダース、作曲も担当)はギターで、大野克夫(スパイダース)がオルガンを担当しています。ポスト団塊ジュニア世代の私でも、顔ぶれのすごさに圧倒されます。
・フランク永井「夜霧の第二国道」
今は亡き祖父が好きだった、ということを母から聞いて知った曲です。クラビオリンによるイントロからして引込まれました。歌詞の冒頭部「つらい恋ならネオンの海へ捨ててきたのに忘れてきたに」という詞の表現が、やや気になります。フランク永井といえば、「恐妻映画」(ここを参照)の『西銀座駅前』(1958)で歌う表題曲も好きです。「ABC(えーいびーしー).XYZ(えっくすわーいずぃー)」という低音の歌い出しが渋い。
・芥川也寸志「八つ墓村―メインタイトル―」
芥川さんの映画音楽には素敵な小品が多く、冒頭のスタッカートが印象的な「煙突の見える場所」とか、チャーミングな「猫と庄造と二人のをんな」(「猫のワルツ」)とか、ロマンティックな「影の車」とかは、映画ともども私のお気に入りです。そして、最も好きなのが「八つ墓村」のメインタイトル。
まず、シングル(12インチ)が前宣伝もかねて先行発売され、メインタイトルやエンディングも収録されたLPがこれにつづきましたが(ともにビクターレコード)、シングルは「聞きもの」としてアレンジされていますし、B面(A面は「道行のテーマ」)の「落武者のテーマ」(呪われた血の終焉)はLPに収録されていません。このLPは長らく廃盤になっていましたが、一九九六年になってから、「SLC日本映画傑作選」(サウンドトラック・リスナーズ・コミュニケーションズ)の一枚としてようやく「復活」しました。「特典」として、シングル・ヴァージョンも収録されています(『18人の金田一耕助』参照)。しかし、私がこれを知ったとき、このCDはすでに廃盤になっていました。その後、運よく「復刻! 邦画名作選」(カルチュア・パブリッシャーズ)から出た(二〇〇一年)ので飛びつきました*3。その解説には、こうあります。「芥川は本作の完成に寄せてこうコメントした。『私の数多くの映画音楽の中で、抒情的なもの、心理的なもの、官能的なもの、象徴的なものなど、手法上のあらゆる要素がふくまれていて、私の映画音楽の集大成です』。多分に映画の宣伝が盛り込まれた、社交辞令的な発言だとも思うが、『八つ墓村』の音楽の特徴性はある程度ここに語られている。(中略)ティンパニとトレモロの前奏を経て弦楽器群と木管楽器群のユニゾンが高らかに奏され、山渓の情緒を漂わせる金管楽器群が響くメインタイトルは、郷愁を駆り立てる純日本的で清らかな抒情性を、これでもかとぶつけてくる」。
【Five people to whom I'm passing the baton (バトンを渡す 5 名) 】
最後のこれが、ひじょうに書きにくいために、投稿を渋っていました。
諒承を得たのは一名だけで、他の方々には勝手にバトンをお渡しすることにします。済みません。もちろん、無視してくださっても構いません。
(id:kuzan)様
(id:Akimbo)様
(id:samsa01)様
(id:acidManso)様
(id:Makisi)様
宜しくお願い致します。
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ところで、晩鮭亭さんが今日購入された本とまったく同じものを、実は私も今日購ったのでした。もっとも、二冊とも新本なのでこれはあり得る話なのですが、ちょっと驚きました。
嵐山光三郎さんの『古本買い 十八番勝負』は、以前このブログでも触れたことがあるのですが、集英社文庫は、『リンボウ先生の閑雅なる休日』*4を買うか『谷川俊太郎詩選集1』を買うかで迷い、けっきょく後者に決めたのでした。小学生のころ御世話になったN先生は、この本に収めてある「生きる」という詩が好きで、よく読んでくださったものでした。
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引用の誤りなどがあったので訂正。それにしても統一感がない。自分の好きな曲(本や食物でもいいのだけれど)について書くことはかなりの恥ずかしさを伴うものだ、ということにあらためて気づかされました。