文化生活一週間

レポート作成に取り掛かろうとおもったのだけれど、輪読会の資料作成。その合間に読書など。
小沢昭一『あたく史 外伝』(新潮文庫)読了。
キートンの探偵学入門 [DVD]
夕方、バスター・キートン『文化生活一週間』(1920,米)を観る。辯士はやはり澤登翠さん。昨日の『澁川伴五郎』も澤登さんだった。
今日からBS2で、なぜかキートンの作品が放送されています(三日間)。明日は『ゴルフ狂の夢』(1920)、明後日は『ハード・ラック』(1921)。
私はこれまでに、キートン作品を五本観たことがありますが*1、記録によれば、『探偵学入門』(1924)と『ハード・ラック』(1921)をとりわけ面白く観ています。しかも『探偵学入門』は、ウディ・アレンカイロの紫のバラ』(1985)がオマージュを捧げた作品だということですっかり気に入ってしまい、二年間で三たび鑑賞しています。
ひさびさのキートン映画『文化生活一週間』も、なかなか面白く観ることができました。他の多くの作品と同様に、キートンとエディ・クライン(エドワード・F・クライン)が共同でメガホンをとり、脚本も執筆しています。撮影はエルジンレスリー。常連のジョー・ロバーツも出演しています。キートンの体を張った離れ業も活かされていて、スラップスティックとして上質の作品であることはもちろん、十三日の金曜日に新築祝いをしたり、“WELCOME”という文字をわざわざ逆向きに書いてみせたりするナンセンスギャグもちりばめられています。
この映画では、キートンの花嫁役を演ずるシビル・シーリーが愛らしくて非常に良い。彼女がバスタブにつかっているシーン。浴槽の外にスポンジを落してしまって、うまく取ることができない。それを取るためには、いったん立ち上がらなければならないのですが、それでは「観客」に裸体を晒してしまうことになる。カメラのレンズを気にする*2彼女。すると、どこからともなく第三者の手が伸びてきて、レンズを覆う。その手がレンズから離れた次の瞬間には、莞爾として笑うシーリーの姿を捉えます。しかし、その場に夫であるはずのキートンが落っこちてくると、シーリー、ひきつった顔で「一秒でも早く出て行って」。この二段構えのギャグが可笑しくてすばらしい。文字で書くと、そのおかしさが伝わらないのが残念です。

*1:『探偵学入門〔忍術キートン〕』(2003.6.27)、『化物屋敷』(2003.11.5)、『ハイ・サイン』(2003.11.6)、『ハード・ラック』(2003.12.1)、『強盗騒動〔悪太郎〕』(2003.12.11)の五本。亀甲括弧内は旧邦題。丸括弧内は鑑賞日。

*2:キートンの作品は、「内」と「外」の境界をわざと曖昧にすることがままあり、早い段階から「観客」を意識していたことが明らかです。『探偵学入門』の演出(観客としてのキートンが映画の世界に入ってしまう)は特に有名です。ところで、作品中でBGMが流れていて、登場人物が「おい、うるさいぞ」と叫ぶと、音楽がぴたりと止むモノクロ映画があったのですが、何という映画でしたっけか。このギャグも、キートンの手法を思わせます。