晴。
午後から、京都で文字研のフォーラムがあるので、午前中に家を出る。
車中で専門書と、永嶺重敏『怪盗ジゴマと活動写真の時代』(新潮新書)を読む。後者は読了。「非常にスコブル」面白い本。私は、『じゃあまん探偵団 魔隣組』(おお懐かしい)に出て来る怪盗ジゴマとして「ジゴマ」を記憶しており、オリジナルの「ジゴマ」については殆ど知らなかった。ただ、明治‐大正期にかけてのいわゆる「ジゴマ上映禁止事件」はどこかで聞きかじって何となく知ってはいたが、詳しいゆくたてを知ることができたので非常に満足した。「上映禁止事件」によって、むしろ「ジゴマの記憶」が「根強い生命力を持って連綿として受け継がれてい」く(p.176)ことになったという見方がたいへん面白い。
またこの本によって、東京と地方の「ジゴマブーム」にやや温度差があることも分ったが、日本初の「メディアミックス」として「ジゴマ」が受容されていく過程は興味深く感じた。その他、内田魯庵のジゴマ擁護論(楽観論?)や今東光のジゴマ話などを面白く読んだ。駒田好洋の地方巡業を描いたくだりには胸が熱くなった。
(メモ。桑野桃華『水のながれ』は、ぜひ読んでみたい本である)
- 作者: 永嶺重敏
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/06/16
- メディア: 新書
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次いで大学堂書店で、岸惠子・秦早穗子『パリ・東京井戸端会議』(新潮文庫)200円、常盤新平『川明かりの街』(文春文庫)150円、坂口安吾『ジロリの女』(角川文庫)200円、坂口安吾『散る日本』(角川文庫)200円を購った。『ジロリの女』は、いぜん晩鮭亭さんと退屈男さんが話題にされていた作品で、気になっていた。
平安堂書店、赤尾照文堂もひやかしただけ。時間(と予算)の都合上、寺町通のほうへは行けず。
会場に着いたのは午後一時過ぎ。K先生やNさん、Uさんの姿もお見かけする。
午後のフォーラムのパネラーは、小倉芳彦氏(小倉進平のご子息*1)、加地伸行氏、道浦母都子氏。おもしろい話ばかりで、メモをとることもつい忘れてしまった。「字書三部作」がまったく大衆的なものだという加地先生の御意見には納得。全共闘学生との団交など、思い出ばなしもたくさん飛び出した。
その他諸々の用事を済ませて帰る。帰途は、車中で坂口安吾「アンゴウ」(『ジロリの女』所収)など読む。「アンゴウ」は、晩鮭亭さんがブログ上で推薦されていた作品。創元文庫の探偵小説全集にも収められているが、読んだことはなかった。これ、ほんとに、涙が出てきますね。
*1:今日はじめて知った……。