あノンキだね

晴。
最近、おもしろく読み終えた本のうちの一冊が、添田知道『演歌の明治大正史』(岩波新書)。知道は筆名で、本名はさつきという。唖蝉坊添田平吉の長男である。
以下メモ。『ジゴマ』(p.157)。『東京節』の囃し言葉「ラメチャンタラ…」は母から聞いたことがあり知っていたのだが(足立巻一『やちまた』の最初のほうに出て来る「ギッチョンチョン」は、「ラメチャンタラ」につづくものである*1)、「いきな構への帝劇に」から「ポッポと出る汽車どこへ行く」までの歌詞(p.189)は初めて知った。小津安二郎の『東京物語』で、たしか村瀬禪が「あーノンキだねー」と不貞腐れるあのセリフは、どうやら『ノンキ節』(pp.178-79)の囃し言葉であったらしい。『美しき天然』のメロディと『女囚さそり 第41雑居房』の白石加代子(いつ頃から見世物小屋で流れていたか)。「悪魔の辞典」を思わせる『当世字引歌』(p.131)に、「『坊主』は『オキョウノチクオンキ』」(「うるさい人」を「蓄音機」に譬えて云うのはいつ頃までか)。

「アップク、チキリキ、アッパッパア……アッパッパア……」
お下を埃でお化粧した女の子達が、道の真ん中に輪を作って歌っていた。アッパッパアアアア……という涙ぐましい旋律が、霞んだ春の空へのんびりと蒸発して行った。
江戸川乱歩『白昼夢』,光文社文庫版『屋根裏の散歩者』所収,p.429)

この歌、以前から気になっていたけど、『隆盛節』の一節だったのか(p.113)。

*1:同じく『やちまた』に出て来る「マックロケノケ」は、『マックロ節』の一節である。