文豪の怪談

書籍部で、吉井勇『東京・京都・大阪―よき日古き日―』(平凡社ライブラリー)。
オルテガ・イ・ガセット 神吉敬三訳『大衆の反逆』(角川文庫)を読みはじめる。
川端康成「片腕」再読。なんちゅう悪趣味だろうか。とてもついてゆけないのだが、めくるめく言葉の奔流と、流れるような文体には恐れ入谷の鬼子母神
今月から、東雅夫編で「文豪怪談傑作選」(全四冊)というのがちくま文庫から出ていて、その第一回配本は、「川端康成(片腕)」。「幻妖ブックブログ」には、「たちどころにリストアップされた50人近い候補作家の中から、第1陣4冊に誰を持ってくるべきか……」とあり、その「第1陣4冊」として、川端康成(片腕ほか)・森鴎外鼠坂ほか)・吉屋信子(生霊ほか)・泉鏡花(黒壁ほか)が選ばれた、ということなのだそうだ。
漱石露伴三島由紀夫*1がないのは何故だろうか、とちょっと不満に思っていたのだが、そういうことだったのか。「第2陣」「第3陣」を愉しみにしておきたい……と云いたいところだが、刊行されるのはいつの日か。まあ気長に待とうと思う。
「一作家一冊」ということでいえば、河出文庫にかつて「不気味な話」シリーズというのがあり、これもやはり「幻想文学企画室」の東雅夫氏が編集協力者として関わっていたのだった。私が持っているのは、「江戸川乱歩」のみなんだけれど、ほかに「夏目漱石」「谷崎潤一郎」などがあるらしい。もうとっくに品切となってしまっているのだが、古本屋で見かけたこともない。
この「不気味な話」が出たのは、ちょうど乱歩が生誕百年を迎えたころで、河出文庫も乱歩のコレクションを刊行していた。当時のこづかい銭は少なかったので、新本では、「変身願望」しか買えなかったが。

*1:私は、大学生になったばかりの頃、三島の「雛の宿」を読んでゾッとしたので(新潮文庫版では、確か『女神』に入っていたと思います)、友人に「これは怖いよ」と云って薦めたら、こんなのぜんぜん怖くない、と言われた。そんな筈はありません。本当に怖い小説です。